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岩井香楠子さんの工房見学へ行ってきました

初夏の明るい日差しに包まれた2008年7月10日(木)。神奈川県横浜市にある型絵染め作家・岩井香楠子(いわいかなこ) さんの工房を訪ねました。
岩井香楠子さんには2008年8月『銀座もとじ ぎゃらりー泉』にて展示会をお願いしています。 今回のお話は少し急だったので驚いたそう。「今回はお誂えメインでご相談させていただきます。 お客様とお話するのは大好き!すごく楽しみです。」 新しい作品も現在創作中。構想中のたくさんの図案も見せていただきましたが、 どんな作品に仕上がるかは当日までのお楽しみです。「次の季節に向けて、 今回はクリスマス柄もご紹介する予定なので、ぜひ楽しみにしてくださいね。」
岩井香楠子さんによる解説
古い工房の建材を活用「
横浜の丘の上の見晴らしの良い場所にある岩井さんの『香南染工房』。 開放感のある新しい工房は昨年建て替えたもの。「以前の工房は古い家屋でとても雰囲気があって 大好きでした。けれど老朽化でどうしても取り壊さなければならなくなってしまって。 でもどこかに残したくて、建材の板を今は生地を張る紐をくくりつける板として使っています。」 工房のまわりにはたくさんの花草が。岩井さんの作品があふれたようなとても素敵な情景です。
「ここからいっぱいインスピレーションをもらっています。今日はトマトが食べ頃だったの。 朝採れよ。かわいいでしょ。」ちょっとたて長のぷっくりしたミニトマト。 岩井さんの作品のみずみずしさは、自然に包まれた暮らしにあるのでしょう。「毎日が新鮮!」 楽しそうな笑顔にその言葉がとてもぴったりです。
岩井さんはまた、旅も大好き。毎年、海外旅行へ赴きます。 「新しい刺激をもらうためには旅が一番!」最近はトルコのイスタンブールに行って、建物の装飾や 色使いに「ドキリッ」としてきたそう。 「旅じゃなくても、いつもメモと着物の雛形は持っていて、電車の中や道で素敵なものを見つけたり、 思いついたらすぐに書き留めています。」岩井さんの宝のメモ。目をきらきらさせて街を歩く姿が 目に浮かびます。
型絵染めの瞬間
岩井香楠子さん工房見学
工房にはお弟子さんが4人いて、中には『銀座もとじ』で岩井さんの作品を見て弟子入りを決めた女性もいます。 みなさん本当にとても仲が良さそう。「私は弟子にはとっても恵まれているんです。みんないい子ばかりなの。」 岩井さんは私たちにも丁寧に作品の制作工程を教えてくださいました。
岩井さんは型絵染め作家。型絵染めの命は型紙。柿渋染をした和紙を彫っていくのですが、 「彫り方は人それぞれ。10年近くやっていると「これじゃなくちゃ」という彫り方や刀が出てくる。
弟子たちもそれぞれ個性があるの。紅型を学んできた人は小さな刀で押し進めるように彫るし、 大きな刀ですいすいとのびやかに彫る人もいる。」「とにかくみんな彫るのは大好き。 型絵染めをやっている人はたいていそうみたい。とっても楽しいの。みんな必ず自分で彫ります。」 「私は彫りたいために図案を描くくらい。」
型絵染めの型紙
豆汁の作り方
型が出来上がると、次は染めです。生地の上に型を置き、もち米で作った糊をハケでのせて防染を繰り返して 多色を染めます。「私が使っている色は6つだけ。水色、藍色、ピンク、黄、茶、黒。これを豆汁(ごじる)でといて、 混ぜ合わせて、様々な色を作り出します。豆汁は、毎日前日から冷蔵庫で水につけて大豆をふやかせておいて ミキサーにかけて作ります。だから染料は半日しか持ちません。」
染めが出来上がったら、洗いで糊を落とします。染めの世界で言い継がれている言葉に 「洗いにはじまり、洗いに終わる。」というものがあります。
洗いは中腰でするのできつい仕事ですが、 染めにとってはとても大切なことです。「どこの工房も、洗いがはじめ。ここで根をあげてしまう人も いっぱいいるんです。でも洗いが出来てやっと次に染めに行けるんですよ。」
糊を落とす洗い
岩井香楠子さん
職人の世界の厳しさは岩井さん自身も経験されてきたこと。岩井さんが着物の染めをはじめた頃は 着物需要の最盛期でとにかく人手が足りないという時代。面接に行ったらその場で「描いてみろ」と 見本もないまま生地を渡され、「まだ描けないのか」と怒鳴られながら必死に仕事をしました。
そうして腕の良さや縁に恵まれ、大手百貨店の呉服部に引き抜かれさらに修行を積み、独立し、 『香南染工房』を設立。昔ながらの職人の世界からアメリカでの滞在経験、百貨店での ワイルドスミスの絵本からヒントを得た着物づくりなど、多岐にわたる新しい感性に触れる独自の経験が、 今の岩井さんの作風を作り上げています。 「神経質にやったからといって、いいものができるとは限らないのよ。」 そういって明るく笑う岩井香楠子さん。花草が満開をむかえたような心がわくわくする意匠が多い 岩井さんの作品。展示会の際には『ぎゃらりー泉』が素敵な花畑になることでしょう。 どんな作品が集うのか、ぜひ楽しみにお待ちください。

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