伊砂利彦とドビュッシーをめぐって~音とかたちの出会い~|活動レポート

伊砂利彦とドビュッシーをめぐって~音とかたちの出会い~|活動レポート

雲ひとつない五月晴れの美しい午後。
染色作家:伊砂利彦さんを迎えたもとじ倶楽部は、こもれびのような明るい清々しさに包まれました。

資生堂パーラー9階の大きな窓のあるサロンのさんさんとふりそそぐ陽射しの中で、 ドビュッシーの音楽から生まれた氏の作品を、ピアノの生演奏とともにご覧いただく会。 やわらかな光の中で、聞き手:詩人の高橋睦郎さんのリードによって対談が始められました。

音とかたちの出会い~伊砂利彦とドビュッシーをめぐって~
伊砂利彦さんの京都での幼少時代のお話から、富本憲吉氏の『模様から模様をつくらず』という言葉との出会い。 伊砂利彦さんの作品のテーマが『松』から『水』、そして『音』へ移った制作過程の中でのさまざまなエピソードを お話くださいました。

「『音』シリーズへ移ったきっかけは、河津七滝へ行った夜、京都でムソルグスキーの『展覧会の絵』の演奏会を 聴いたときに、音がはっきりとしたタッチで形になって頭に目に飛び込んできたこと。滝の落ちる水音が そのピアノ音と同じように感じられたんです。」と。 そこで、高橋さんが、ムソルグスキーの「展覧会の絵」は、『音による画集』と言われているらしいです。伊砂さんはそれを、 絵から音へ表現し直している。大変おもしろいことですね。と仰ったのが印象的でした。

高橋さんが、「伊砂さんにとって女性、女性の美しさとは?」と尋ねると、「難しい質問ですね」と 少し微笑まれながら、「小さい頃からミロのヴィーナスをよく描いていたから、それが美しい女性と思っている。」 と。また、「恋人を10人作りなさいとよく学生には言うんですよ。心のね。
伊砂利彦作品

きものを作るとき、 これはあの人に着せたい!と思えること。模様づけも、召したときに美しいように作るものだから、 イメージさせてくれる女性が必要なんです。」と、ちょっとどきりとするような発言も飛び出しました。

また、「今から挑戦したいことは?」という質問には、「もう一度写生した場所へ行きたい。 行き届いていない作品が多いから、それを完成させたいです。」と、気負いなく話される姿に、 いくつになられても変らぬ創作意欲が、とても清々しく感じられました。

ピアノの演奏
お話を伺った後、「音と形の出会いを体験してみましょう」ということで、 ボストンからお呼びしたピアニストによる生演奏とともに、伊砂さんの作品をご覧いただきました。 今回、会場にはドビュッシー前奏曲Ⅰ、Ⅱよりインスピレーションを受けて創作された8作品が集いました。

「オンディーヌ」「パックの踊り」「花火」など、 きらきらと光が差し込む空間で、それぞれ個性ある曲を聴き、音から形を想像するという体験は、本当に素晴らしく、 澄み渡るような幸せな心地に包まれました。

質疑応答の際には、本当に多くの方がお手を上げてくださいました。「ピアノ曲以外では作られないのですか?」 という質問には、「私は色よりも、影・日向、形に興味がある。ピアノ曲以外だと自分には色を感じてしまうので、 作らないことにしている」と。おだやかな表情の中に、純粋さと、頑なな信念が垣間見られるお話でした。

その後、ビュッフェスタイルのランチをお召し上がりいただきました。会場には、伊砂さんの作品を お召しになられた方もいらっしゃり、伊砂さんや、また一緒に来場されていたお嬢様、お孫様も とてもお喜びになられていました。
ビュッフェスタイルのランチ
伊砂利彦さんの着物作品
作品集をお求めの方には直筆のサインをしてくださいましたが、ワインを3杯飲まれた後は、「少し文字がいつもと違う」と、 お嬢様とともに笑いがこぼれていました。あちらこちらで皆様と記念撮影をされるなど、 会場は伊砂さんの人柄が伝わるような大変やわらかなムードにつつまれていました。
ビュッフェスタイルのランチ
(写真:右より、店主:泉二、伊砂利彦さん、ピアニスト:Timothy Bozarthさん、高橋睦郎さん、企画デザイン室長:續久仁子)
(写真:右より、店主:泉二、伊砂利彦さん、ピアニスト:Timothy Bozarthさん、高橋睦郎さん、企画デザイン室長:續久仁子)
ひだまりのような明るい空間につつまれているすべてが、とても綺麗な会でした。 一年以上前より、もとじのために作品を作ってくださった伊砂利彦さんに、本当に心より感謝申し上げます。 ご縁を頂戴しました皆様が、素敵にお楽しみいただけますよう願っております。