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草木染め作家・佐藤竜子さんと、金工作家 宮本徳子さんのぎゃらりートークを開催しました

2012年3月、草木染め作家 佐藤竜子さんと、金工作家 宮本徳子さん、お二人による個展を開催させていただきました。3月24日(土)には、佐藤竜子さんと宮本徳子さんをお迎えして、ぎゃらりートークを開催させていただきました。
草木染め作家 佐藤竜子さん 金工作家 宮本徳子さん
背景の生地:佐藤竜子 作 帯留:宮本徳子 作
草木染作家・佐藤竜子(さとうりょうこ)さんは、2005年に、銀座もとじにて、ご自身にとっての初個展をさせていただきました。7年ぶり、2回目となる今回は、金工作家・宮本徳子さんとご一緒に『二人展』として開催。そのご縁のきっかけは何だったのでしょうか?
(佐藤さん)「30歳頃、女性3人で京都でシェアハウスに住んでいたんです。一人が結婚で出ることになり、そこで宮本さんを誘ったんですよ。」そうして始まった共同生活は約6年も続いたそう。宮本さんの結婚を機にシェアを解消された後も、ずっとご縁がつながっているそうです。 今では、佐藤さんの着物や帯に合わせて帯留を作られている宮本さんですが、シェア時代は建築の設計事務所で働かれていたそう。 お二人のものづくりの歩みや想い、発想のヒントについてお伺いしました。

草木染め作家・佐藤竜子さん

「先生と呼ばないでください。お竜さん(おりょうさん)と呼んでくださいね。」 ふわりと温かな雰囲気の小柄で華奢な女性。初めて会われた方はきっとそう感じられることでしょう。でもその繊細なお姿からは信じられないほど、すらりと一本の強い芯が通った方。
佐藤竜子 作
「作品が作る人を語る」と言いますが、作りあげられた柔らかい草木染めの作品はまさに佐藤さんそのものです。 現在は滋賀県大津の湖西に工房を構えてものづくりをされている佐藤竜子さん。 京都の短大で染織を学び、卒業後に京都の帯工房で修業。「草木染の帯も作っている、当時の西陣としては珍しい志のある会社でした。そこで働いているうちに、“草木の持っている力にもっと関わりたい” と感じるようになったんです。」その頃からさらに“自分で織りたい”“自分も着たい”という想いがむくむくとわき上がってきたそう。そしてその後ご縁があり、福岡の染織作家・甲木恵都子さんのもとで修行させていただけることに。2003年に現在の大津へ移り、自宅兼工房を構え、作家として制作活動を始められました。 肩に力をいれず、植物が出す色を信じ、その色を活かして作る。 佐藤さんの草木染で多く使われているのが<ばら染>と<桜染>。
 佐藤竜子 作
珍しい<ばら染>は、京都のお知り合いがばらを育てていてくださったのがきっかけ。現在は近所の赤いばらの木をもらって染めているそう。鉄媒染して染めた<ばら染>は、やわらかなグレーに染められています。
本当は花が咲く前の花木の方が栄養たっぷりで良い色が出るそうですが、佐藤さんは「花は咲かないと可哀そうだから」と、ちゃんと花が咲いてからもらっているのだそうです。 <桜染>の桜のもらい方も佐藤さんらしいもの。お住まいの滋賀県湖西は雪が多いことで有名。毎年冬に雪が積もると、桜の木が雪の重みで折れてしまうのだそう。その木を譲り受け、<桜染>をされています。 「植物が出した色を眺めていると、私が思い描いた色よりずっとずっと素晴らしい色に見えてきます。その色を見て、活かすために、無地の着物にしたり縞の着物にしたりと考えて作るのが楽しいです。」
作品のひとつひとつには、染料として使用した草木の名前と、自分が作り出していくつめの作品かというナンバリングの数字が、和紙にきちんと書かれ、添えられています。現在、年間に着物で10反ほどのものづくり。
佐藤竜子 作
そのひとつひとつを、大切に想いを込めて作られている佐藤さんの温かなお心が、手にする喜びをさらに伝えてくれます。 ひとつひとつ、想いを込めて。無地、縞、格子。 無地感覚のシンプルデザインを優しい草木染とあたたかな気持ちで包み込む織物。色味の具合も本当にやわらかでセンス良く、今、着たい、そう思わせてくれる織物です。

金工作家・宮本徳子さん

宮本徳子 作
今回、銀座もとじで初めてのご紹介となる金工作家 宮本徳子さんは、大学卒業後13年間、建築事務所で内装の仕事をされていたという、異色の経歴をお持ちの方です。 作品を拝見すると、その“建築”の世界でのご経験に、なるほど、とご納得されることでしょう。
美しくしなやかなフォルム、そして帯を傷付けない計算された丁寧で滑らかな仕上がりが、“建築の設計図”を思わせるようなモダンな幾何学模様を作りあげた、上質な個性を感じさせるデザインです。 建築の世界で生きられていた宮本さんはなぜ金工作家の道を歩まれたのでしょうか? 「建築のデザインは自分で設計しても、作るのは建築現場の方。家具などもデザインしながらドアノブのカタログに 面白いものが無いことに気づき、それくらの小さいものならば自分でデザインしたものを自分で作ってみたいと、 鉄を扱う作家さんを通じて彫金のできる方に習い始めたのが、作品づくりのきっかけなんです。」
当日も、髪留やペンダントなど、ご自身の素敵な作品を身につけられていた宮本さん。帯留の制作は、佐藤竜子さんの個展で 作品に出会ったのがきっかけだったそう。「京町屋の改装もしている設計事務所だったので、
宮本徳子 作
そういった町屋の窓や建具の格子などがとても印象に残っていて。それが今でもフォルムのヒントになっています。」 宮本さんの帯留は表裏が全く違うデザインで仕上げられた、リバーシブルでお楽しみいただけるもの。艶やかな面の直線的なデザインは、この「窓」のイメージで作られているそう。でもそれだけだと硬いイメージになってしまうので、もう片方の艶けしの面は柔らかい曲線のデザインを心掛けていらっしゃるそうです。 「佐藤さんの無地、縞、格子の紬に合うように、目立ちすぎないように引きたてつつ、全体を引き締める帯留を、常に念頭に置きながら作っています。」 まるで小さなアクセサリーのよう。シャープな銀の素材感と、建築的な装飾、そして全体のどこかやわらかな手仕事のフォルムが美しい趣味性を伝えてくれる、とてもモダンでありながらあたたかさのある作品です。
佐藤竜子さん 店主 泉二弘明 宮本徳子さん (左から)佐藤竜子さん、店主 泉二弘明、宮本徳子さん
(文/写真:伊崎智子)

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