「日本の絞り 安藤宏子の世界」ぎゃらりートーク開催レポート

安藤宏子さんぎゃらりートーク
2009年9月10日(木)〜13日(日)まで、銀座もとじにて開催している『日本の絞り 安藤宏子の世界』展。 9月12日(土)には絞染め作家・安藤宏子さんを迎えての「ぎゃらりートーク」が催されました。
”まるで蛹が蝶になったみたい”

安藤さんは、絞りを初めて目にした時、そう思ったそう。 それから40年、世界中の絞りの歴史と技法を研究し、100種類もの日本の絞りを体系化した安藤さん。

絞り染
「最初は“研究”から入ったのだけど、 縁側で絞りをしているおばあさんたちを見ている内に、ちょっとやりたくなって。 でもおばあさんたちは教えてはくれないの。仕事には時間に制限があるから。 だから見よう見真似で家でやって、翌日持って行って見てもらう。そんな日々の繰り返して習得していきました。 そうしたらもう、絞りがおもしろくなって。絞りって本当に楽しいんですよ。」

大分県生まれ。22歳の時、愛知大学の研究所に勤務していた安藤さんは有松・鳴海絞りの産業として の成り立ちの調査に同行したことがきっかけで、絞りの世界に興味を持ちました。 名古屋の代表的な絞りに「豊後絞り」がありますが、豊後とは元々、故郷大分の古称。 なぜ故郷の名が名古屋の技法名として残っているのか?その疑問から、さまざまな調査を進め、 絞り手の所に通い、まとめ調べていくうちに、全て自身で絞りの技術を身につけていったと言います。

そうして、100種類もの日本の絞りを体系化した安藤さん。 その中には、もう2度と再現出来ない職人たちの技もありました。 そういった活動から、1992年には100種類もの絞りの工程を写真で解説した技法書、『日本の絞り技法』(NHK出版協会) を著すことにもなりました。

日本紫と日本茜

安藤さんは、現在ではほとんど手に入らなくなった貴重な染料、『日本紫』と『日本茜』でも染色をしています。 安藤さんは自生しているフレッシュな根が手に入った時だけ染めるので、 完成までの年月は計り知れません。しかもここまで深く、じっくりと染めらるためには、 染料となる枝の量と、そこから抽出できる染料の量・質が重要となります。 『日本紫』も『日本茜』も、故郷・大分県の竹田市のものを使用しています。

日本紫(ムラサキ)

日本紫はムラサキ科の多年草です。 ムラサキの根は紫根(しこん)と呼ばれ、表皮に紫の色素があり、これを染色に用います。 1年では十分な大きさに育ちにくいので、通常は2、3年かけて大きく育てます。 ムラサキには、西洋紫と日本紫がありますが、両種は交雑しやすいので、安易な取り扱いにより雑種化が心配されています。 ムラサキは自生する場所が極めて限られ、現在では絶滅危惧種に指定されています。

日本紫の根
日本紫の根
根から紫色素を抽出・染色
根から紫色素を抽出・染色
日本紫の作品
日本紫の作品

日本茜(アカネ)

アカネは山野に自生する多年草のつる草。 アカネ染めはこの根から赤色の染液をとって布に染める古くから伝わる技法です。 しかし、今日ではアカネが自生する山野は開発などのため姿を消し、アカネの根を採取することが困難となっています。

日本茜の根
日本茜の根
根から赤色素を抽出・染色
根から赤色素を抽出・染色
日本茜の作品
日本茜の作品

遊草庵について

1980年、今も工房がある愛知県名古屋市に「遊草庵」を設立。 「「遊草庵」は“草遊びの庵”。藍、日本茜、日本紫、以外にもさまざまな草木染めをして楽しんでいます。 それに最初は“草遊び”で終わりかなと思ってたの。 そうしたらこんなにいろんな方とお会いできたり、華やかになって。本まで作れるなんて思ってなかったです。」 安藤さんのお話を聞いていて感じることは、本当に絞りが大好きでたまらなくて、 そしてそれを皆さんにも是非楽しんでほしいと思っていること。 工房設立とともに、「遊草会」(東京・名古屋・大分)という教室を開設し、安藤さんは絞りの指導をスタート、 現在までに2000人以上の人(大学での授業などを合わせたらもっと)に絞りを伝授されています。 その中には作家として活躍されている方もいます。 「生徒には、私の作品やお土産の絞りとかあまり見ないようにって言ってるの。自分の中に必ず自分の感性があるから。 それを大切に表現してほしくて。だからオリジナリティある作家たちが育っていくのかも。 できるだけ自分の垢が付かないようにと思っています。」

これから

安藤宏子
トーク中、絞りの複雑で手のかかる技法の話になると「あんまり言うと“大変でやりたくない”と思われたら嫌だわ。」 と早々に切り上げる安藤さん。「作るということは楽しいことなんですよ。皆さんにもやってほしいの。 これからもっともっと仲間を増やしていきたい。だって絞りって本当に楽しいんですよ。」。 「遊草会」のベテランは白影絞りなども絞れるのだそう。安藤さんの話を聞いていると 「私もこんなにきれいな絞りが作れるかしら?」と夢が膨らんできます。 「これからは一年にひとつ、いいものづくりができればいいくらい」と語る安藤さん。

入魂の一品、ぜひ目にしたい、そう思わずにはいられない、安藤さんの絞りへの愛情にあふれた素敵なトーク会でした。