絞染め作家・安藤宏子さんの工房に行ってきました

絞染め作家・安藤宏子さんの工房に行ってきました

2009年9月10日(木)〜13日(日)『日本の絞り 安藤宏子の世界』を開催いたします。 今回は絞染め作家・安藤宏子さんの工房を訪ねました。

名古屋駅から名鉄本線に乗って15分ほど、 「有松駅」「鳴海駅」といった絞り技法として聞きなれた地名が並ぶ路線のとある駅。 歩いて20分ほど、ゆるやかな登り坂が続く道が突然、急勾配な坂道になり少し驚いたところに 安藤宏子さんの工房「遊草庵」はありました。

安藤宏子さんの工房「遊草庵」
表から見るとちょっと大きめの一軒屋。こんなところで?と思いながら上がらせていただくと、 リビングの奥には藍甕が4つもある染め工房、2階にはフローリングの、 まるでちょっと合宿ができそうなくらい大きな広間がありました。

「実は、本当にここで合宿をするんですよ。3泊4日で、10人くらい。夏休みの時期などにね。 もう15、6回くらいになるかしら。「絞りが好き」っていう方がいると、自分の作品を楽しんでもらうのではなくて、 「じゃああなたも一緒に絞りましょうよ!」って言っちゃうの。

最初はホテルに泊まってもらってたんだけど、 皆さん楽しくなっちゃって結局ここに泊まることに。徹夜で絞り作品を創ったり、おしゃべりしたり。楽しいのよ。」

大分県生まれ。22歳の時、愛知大学の研究所に勤務していた安藤さんは有松・鳴海絞りの産業としての 成り立ちの調査に同行したことがきっかけで、絞りの世界に興味を持ちました。名古屋の代表的な絞りに 「豊後絞り」がありますが、豊後とは元々、故郷大分の古称。なぜ故郷の名が名古屋の技法名として残っているのか? その疑問から、さまざまな調査を進めていく内に「こういうことになった」のだそう。

絞り染めは全て手仕事。口伝や秘法として存在していた数々の絞り技法。高齢化・伝統産業の衰退によって 作業を辞めてしまうとその技法も消えてしまう。このままでいいのだろうか? 絞り手の所に通い、まとめ調べていくうちに、全て自身で絞りの技術を身につけていったと言います。

世界中の絞りの歴史と技法を40年に亘って研究し、100種類もの日本の絞りを体系化した安藤さん。 その中には、もう2度と再現出来ない職人たちの技もあります。

1992年に著された『日本の絞り技法』(NHK出版協会)は、日本に伝わる100種類もの絞りの工程を 写真で解説した技法書と、各地で眠っていた素晴らしい絞り染めを紹介した資料編からなる書物。 以前、銀座もとじにいらした京都の絞り専門家も「一番詳しい絞りの本」とご紹介くださったほど、絞りの世界で認められた一冊です。

豊後絞り
豊後絞り
1980年、今の場所に「遊草庵」を設立。「遊草会」(東京・名古屋・大分)にて絞りの指導をスタート、 現在までに2000人以上の人に絞りを伝授されています。 「「遊草庵」は“草遊びの庵”。藍、日本茜、日本紫、以外にもさまざまな草木染めをして楽しんでいます。 藍は4つの甕を使って、順繰りに建てています。
きものは13mもあるので、一反染めるだけでも、 人間も体力がいるし、藍の方も染まる許容量があるんです。

だから建てる時期を変えて、きものを染めるんです。 日本茜や日本紫は自生しているものを使っているのですが、現在では本当に少なくて。 フレッシュなものが手に入ったときに染めるので、作品が出来上がる時期とか、染める回数とかはわからないんです。 濃く、深く、きれいに染めるのって本当に大変。だから出来上がるともう、できれば手放したくなくなっちゃって。 もう2度とできないと思うから。」

絞りや染色技法の研究や再現をすることや、絞りが本当に大好きで素敵なものを作りたい、皆さんに伝えたい、 といった気持ちが強かった安藤さん。これまでもミキモト(銀座)などで個展を開かれていましたが、 今回開催させていただく、2009年9月10日(木)〜13日(日)『日本の絞り 安藤宏子の世界』は、 実は安藤さんにとって販売を含む小売店での<初めて>の「きものと帯の展覧会」です。

「布が好きで、いろんな素材を使っています。布を見るとどんどんイメージが沸くの。 絞るのも、植物で染めるということも今でも夢中です。だってこんなにきれいなんですもの。」

ほら、と見せてくださった数々の染め作品たち。藍、紫、茜、などで創られた染布たちは本当に彩り豊か。 お話を聞いて、見ているだけでわくわくしてきます。

美しい日本の色で染めた約30点の着物、帯が集います。 幻と言われる白影絞りや縫い養老絞りなどの絞り技法を使っての創作は、安藤ならではの日本の絞り技の結晶です。 ぜひこの機会に貴重で美しい絞りの世界をお楽しみください。

安藤宏子さんの作品