こちらは、日本工芸会正会員 刺繍作家・森康次さんの九寸帯作品です。
京都上賀茂に工房を構える森康次さん。京都の「ぬい屋」に生まれ、15歳の時から刺繍の世界に入り、この道50年。
『ものをよく見てその命のありようを「形」にする』。
森さんがよく口にされるこの言葉は、この“写生”の経験から生まれたもの。写生をしてよく見てみると、葉や花びらのついている角度、つぼみの詰り具合がよくわかる。それを注意して、丁寧にきちんと描くと、花にいきいきとした生命力が出てくる、と仰る森さん。丁寧にものを見る力が備わっているからこそ、独特の美しい立体感や色彩が生まれます。
作品名:『花に詩う』
【作者コメント】
【2020年銀座の柳よる 刺繍糸の草木染】
2020年8月26日 銀座の柳が届く。
きれいな葉と茎とに選別しながら、綺麗に洗って、染の段取りと準備をする。
2020年8月27日、28日、29日の3日間で 22綛の糸染と乾燥。
2020年8月30日 糸巻き22色 22管に巻き取る。
染液は「葉」だけの染液と「枝」だけの染液とに分けて似出して染液を作る
媒染剤として鉄・錫・チタン・銅・ミョウバンの5種類を使う。
染液の量 多い少ない。媒染剤の量 多い少ない。2度染。短時間か時間をかけてゆっくりか等で濃淡を意識する。
今年の柳は良く染まりました。染重ねもしましたが透明度のある濃い色もでました。
名古屋帯と男性用の羽織の制作ですが、私の物作りは形から(模様から)はいる時と、イメージから(例えば 柔らかいロマンチックな感じで。。。)と言うように幾つかのパターンがあるのですが、今回は「色」が存在しているのです。
(刺繍糸の色)ですから、イメージや模様から入るのではなく、色から入ると言う制作工程でした。
これはこれで面白いのです。
またその繍技のバリエーションも大変見ごたえがあり、立体的に重なり合う表情など、見れば見る程その多様性と技術の高さにほれぼれせずにはいられません。
前柄は、関西巻きの場合は無地になりますので、帯留めを主役にお楽しみください。
洗練された大人のモダン。
甘すぎず、辛すぎない、絶妙な色加減やモチーフ性はまさに現代の街並みに合う着物。
森康次さんの着物は、今、着たい着物です。
友禅とはまた違った、刺繍ならではの贅沢な豊かさ。
控えめさの中に感じられる洗練された個性。
絶妙な抜け加減は、本当に見事で、使い勝手の良さも魅力です。
森康次さんならではの繍技とセンスをぜひご堪能ください。
銀座の柳染めについて
「銀座の柳染め」は、銀座に店を構えた店主・泉二の熱い想いから生まれた、草木染めのオリジナル作品です。銀座の風景として有名な「柳」を、毎年5月に中央区が刈りとるものを特別に分けていただき、作家さんや全国の産地とともに、銀座の息吹を大切に込めて創作しました。