【銀座もとじ 男のきもの シーズナルコレクション】にて制作しました
独特の表情が魅力的な天目染めのご紹介です。
こちらは染め技法はもちろんのこと、素材にもこだわりが尽くされています。
生地に選んだ紬ちりめんは、経糸は「天菊」という最高級の布海苔を使用しています。
生糸に布海苔をつけて織るのは、伝統的な技法で、近年では殆んど見かけられなくなってきました。これは天然の海草である「天菊布海苔」の漁獲量の減少と、それに伴う価格の高騰、さらにはこの伝統製法には布海苔溶き、乾燥など手間がかかるため。それでも布海苔を糸につけて織ると、製造中の糸への損耗が少なく、良い出来上がりになります。
全体の経糸数は11,100本強。
それに布海苔をつけ、5本ずつ引きそろえて織っています。
緯糸は、1本の糸と成るまでに4度の撚りを施した変わり撚糸を使用しています。
生地を精練仕上げしますと、この複雑な撚糸が、味のある、単調でないシボ感を表現します。また、絹を紡いでつくった紬糸を層に織り成し、洒落感を出しています。
その上質な紬ちりめん地に染め上げた天目染の技法も、大変興味深い技が光ります。
こちらの天目染めの一番の特徴は、色をつけるという従来の染色とは全く異なる、色を抜き取るという画期的方法にあります。
まず、下染めした生地の上に引き染めをし、それが乾かないうちに、鞍馬の銘水で一昼夜水にさらし、翌日水切りした選りすぐりの京都の北山杉の挽粉を約1~2cmの厚みでむらなく置きます。そして、その下から熱を加え乾かすことにより、挽粉が染料の色を吸い取り、天目独特の模様となります。この一連の作業を2~3回繰り返すことにより、より深みを持った色となります。
色を吸い上げるこの北山杉の挽粉に出会うまで、パン粉や桜のチップ(桜の木の挽粉)など、様々なもので試行錯誤したそうです。そして、苦心の結果ついに、天目茶碗の味わいのある模様を、表現することができる、この北山杉の挽粉を、見つけることができたそうです。
天目染めの技術は、大変な熟練を要する手仕事であり、一点一点異なった味を持つ格調高い逸品となっています。
こちらは濃紺×青緑の濃淡が浮かび上がる洒落たニュアンスカラーの一枚。まるでその濃淡は霞が立ち込めているかのよう。お仕立てされると濃淡のリズムが浮かび上がりとてもお洒落な着姿を演出いただけます。
無地でも、柄でもない、その中間となるニュアンスほどの柄行は、コーディネート力も抜群です。色選びもこだわり抜いた自信作でございます。
洗練された大人のお洒落をぜひお楽しみください。
羽織にも最適です。
※こちらは【生地巾(外巾)1尺8分(約41cm)】ございます≪広巾≫で織り上げています。裄の長い方にもお楽しみいただきやすい仕上がりです。