八重山諸島の西表島の染織家、前津雪絵さんの絹麻交織の夏帯作品を初めてご紹介します。
前津雪絵さんは東京生まれで、テキスタイルデザインの仕事を通じて沖縄染織に惹かれ、八重山諸島西表島へ移住。竹富町織物事業共同組合にて研修生・組合員として従事後、石垣昭子氏から交織布を学ばれました。
島の恵みを活かしたものづくりを心がけ、八重山木藍や苧麻の栽培、島に自生する植物で糸 を染めて機織りをされています。異素材をくみ合わせることで生まれる風合い交織(ぐんぼう)の布作りが特徴です。
こちらの作品は、経糸に絹、緯糸に絹と手績みの苧麻を使用した「絹麻交織」。やわらかなハリ感のある素材感が涼やかで、さらりとした肌触りが心地よい風合いです。染は「草木染」で、アカメガシワのグレーや茶と、福木とインド藍による緑のシックな色使いが大人っぽく、都会的なセンスが感じられます。
【作家コメント】
<糸について>
経糸に使用しているベースの絹糸は国産の座繰り糸をさらりとした未精錬の状態で草木染めしています。今回の作品は所々に練られた糸も入れることで、ちらりと光沢も感じていただけます。緯糸の1本目はラミーと手績み苧麻糸、2本目は経と同じ絹糸と手績み苧麻糸を数本越しに交互に織っています。
<染めについて>
糸染めはできるだけ島に自生する草木を採取して染めています。
今回使用した福木は、屋敷の周囲に防風林として植えられているものなどが台風で倒れた時にお声をかけてもらい樹皮を剥いで乾燥保存させておいてあるものです。
アカメガシワは島ではわりと何処にでも生えており樹皮や葉を使用。染液をとるために煮出していると香ばしい匂いに包まれ、思わず湯気にあたりたくなります。薬用植物として漢方などにも使われているようですが、島ではちょっとしたお皿がわりにも、暮らしの中にある身近な植物です。
藍は八重山木藍を庭で栽培し泥藍を取って藍建てをしたり生葉で染めたりしていますが、今回はインド藍を使用し福木と染め重ねて緑色に染めました。
<織りについて>
交織は、木綿、芭蕉、苧麻、絹など残糸の素材を組み合わせて家族や身近な人のためなどに織られていたと聞いています。自然体で温かみのある布づくりは私のものづくりの原点と言えるかもしれません。
前津雪絵 (まえつ ゆきえ)
1971年東京都生まれ。大塚テキスタイル専門学校II部ウィービングデザイン科卒業。テキスタイルデザインの仕事を経て沖縄染織に惹かれ、2003年八重山諸島西表島へ移住。2004年竹富町織物事業共同組合 研修生・組合員として従事後、石垣昭子氏から島の素材を活かした交織布を学ぶ。
活動
2009〜2018年
「ぬぬぬパナパナの布」グループ展
2020年「績まれる糸生まれる布」グループ展
2023年「績まれる糸生まれる布 vol.2」グループ展
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