「友禅」の人間国宝 二塚長生(ふたつかおさお)さんの大変稀少な帯作品のご紹介です。
1946年8月12日富山県生まれ、2010年重要無形文化財「友禅」の保持者に認されました。
金沢での人間国宝「友禅」指定は2人目、師事した人間国宝 木村雨山氏以来の55年ぶりとなります。
二塚長生さんは、金沢市内の加賀友禅工房で伝統的な友禅技法を習得し、1974年に独立。当初は加賀友禅を制作していたそうですが、30年前頃には加賀友禅の世界から離れ、糊糸目を主役とした独自の友禅の世界を作りあげました。
特徴のひとつは「白上げ」という技法です。友禅の糊置き技法の中でも、江戸時代中期に流行した、糸目糊置きのみによって模様を白く表す技法を駆使しています。
もち粉と糠を合わせた真糊を、一線一線すべて、手で絞り出して置いていくという繊細な作業。線はわざと、まっすぐのものと、ぎとぎとした風合いと、両方の表情を併用しているそう。ゆっくりとどんくさく、下手に、かつ規則正しく置いていると言います。
もう一つの特徴は、題材です。「雲」「風」「滝」といった躍動感ある自然のモチーフをテーマとして、その動きを捉え、抽象的かつ斬新でダイナミックに表現しています。
金沢駅から40分の高台にあるアトリエ兼自宅は、大きな窓から市内が一望できる場所。雲や風の動きが手に取るように見え、創作の源になっていると言います。
作品名:「寒滝」
二塚長生さんならではの力強く、そして同時に静を感じるような独特の意匠。しっとりとした濃紺地に、真糊糸目によってふっくらと豊かな点線が勢いよく、かつ繊細に、絶妙な空間性で表れます。さらにその一部には、「寒滝」と題されたような水色の彩挿しや、もやのようなやわらぎが与えられています。
「白上げ」技法により自然の動きを抽象的に表現する、繊細さとダイナミックさを併せ持つ芸術性の高い独自の作風。二塚長生さんならではの独特の世界観をぜひお楽しみください。