山形県米沢市、人里離れた山奥で厳しい自然と向き合いものづくりをされる山岸幸一さんの紬は、工房のある地名から「赤崩紬」と名付けられています。
米沢の動織機を主とする機屋に生まれた山岸幸一さんは、手織りの紬に魅了され、草木染の手織り紬に適した場所を求め、28歳の時に、「水」「風」「太陽」が最高の条件で集う、最上川の源流近くの「赤崩(あかくずれ)」に工房を構えられました。
桑畑を耕し蚕を育て、繭から真綿糸を作り、草木染の原料となる植物を栽培し、糸取り、糸染め、機織りまでのすべてをご自身で行うものづくりは、織作家たちからも「究極」と別格の存在とされています。
山岸幸一さんは、創業者・泉二が作品はもとよりその生き方、思想すべてに惚れ込み、人生の師と仰ぐ大きな存在です。
出会いは1995年。泉二が日本伝統工芸展で目にした布のふわりとした風合い、佇まいの清らかさに衝撃を受け、伝手を辿り工房に通い続けてやっと作品を取り扱わせていただいたのは4年後のこと。泉二はあまりの嬉しさに男泣きに泣きました。それから3年後の2002年には初個展を開催し、2021年までに15回を数えるまでになりました。
草木で染めた糸が最も美しくなる年、
その時を待ってから織り上げるため、
山岸さんの作品はすべての工程を終えて反物となるまでに4年から5年もの歳月がかかります。
今回ご紹介する作品は、
山岸幸一さんの作品の中でも、先生ご自身が「珍味」と仰る
「蒅藍を30年重ね染めした」究極の作品となります。
【山岸幸一さんより、作品について】
赤崩紬 草木染 寒染「蒅藍の重ね染 藍霞」
「自家製の蒅にて藍建てした染液に毎年3回染め重ねて、それを30年続けて染めた地色です。
蘇芳の幹で赤に染めて、そこに生糸と真綿の強撚糸の白を入れることにより、シャリ感と立体感を出した「珍味」の藍染着尺です。
繊維のダイヤモンドと呼ばれる「天蚕」を真綿状にして、それを臭木の実で染めて青みをプラスした天蚕真綿糸を入れ込んでいます。
別名【藍霞】と名付けたい風合いの作品です。」
※蒅(すくも)…藍の葉を発行させて作った染料
※天蚕(てんさん)…薄緑色の野生の蚕品種
※寒染(かんぞめ)…寒中に染める技法は『冷染』と呼ばれますが、山岸幸一さんは煮染をせず冷染にて制作した作品に『寒染』という名称を付けています。紅花を冷染して作られる『寒染紅花』は山岸幸一さんの代表作です。
ふっくらと包み込まれるような心地よい風合いは、 すべてを最大限に求めた山岸幸一さんの紬だからこそ。 一般的な球形糸ではなく、「扁平糸」と呼ばれる、内部が空洞状態で断面が楕円のような形の糸を使用することで、手機で織ると適度な歪みが生まれ、長く着用するうちに体にさらに馴染んでいく感触が楽しめるのも大きな魅力です。
山岸幸一さんの究極のものづくりから生まれた、究極の紬。
さらにこちらは「蒅藍を30年重ね染めした」、
山岸幸一さん自身が「珍味」と仰る、究極の逸品です。
山岸幸一さんについてはぜひこちらをご覧ください
>>【泉二弘明ロングインタビュー】男が惚れる男-山岸幸一先生のものづくり
>>【お客様の声】私たちが伝えたい山岸幸一さんの作品の魅力
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【和織物語】「山岸幸一 - 生命の色~ひたむきに生命の美を求めて~」著者:田中敦子(工芸ライター)
【工房見学レポート】「紅花餅作り」
【工房見学レポート】「寒染紅花」
【作家産地】「山岸幸一」
関連動画 公式YouTube
【インスタライブ】山岸幸一さん×店主泉二弘明
2021年工房と生中継配信したインスタライブ
夕方16時「紅花餅から染料作り」 / 翌朝4時「寒染」 / 翌朝6時「寒染」