江戸小紋・菊池宏美さんの江戸小紋着尺のご紹介です。
こちらは、令和元年 第66回日本伝統工芸展 入選作品です。
工芸展出品作品は、作家の思い入れが別格です。菊池宏美さん入魂の逸品、独特の世界観を存分にご堪能いただける作品です。
日本工芸会ホームページでも入選作品として掲載されています(外部リンク)
今回使用した型紙は2018年他界された錐彫りの名手 六谷泰英氏の手によるものです。
絶妙な色合いのブルーグレー地に、細やかな菊紋が表現されています。
菊池宏美さんについて
江戸小紋の第一人者である藍田正雄さんに師事され、独立、 現在は個人工房「よし菊」にて新たな江戸小紋の世界を広げていらっしゃる菊池宏美さん。
師である藍田さんの「今のものを作れ」「平成の江戸小紋を」という言葉を胸に、 今の時代に映える江戸小紋の創作に果敢に取り組んでいらっしゃいます。
例えば江戸時代から続く古典柄であっても、菊池さんの手から生まれる江戸小紋は 今の時代の空気感をまとって、やわらかく香るような微妙な色彩のトーンが美しく、 様々な帯の個性を受けとめながら大変お洒落な着姿を叶えてくれます。
同じ柄の型紙を用いながらも、手掛ける小紋師によって全く印象の異なる仕上がりとなるのも江戸小紋の魅力のひとつ。 仕上がりを左右するのは、主に「型付」と呼ばれる糊置きの工程と、「地直し」と呼ばれる染色後にムラなどを整える工程にあると言われています。
特にこの「地直し」は、菊池さんいわく精緻な柄に「おだやかな深みを与え」「静けさをもたらす」重要なプロセスとのこと。 生地と向き合い、極小の点の一つひとつのすき間を極細の筆で整えていく気の遠くなるような作業に没頭すること十数日。 その聖なる時間を経て新たな命を吹き込まれた江戸小紋には、心地よく静謐な美しさが漂います。
出来上がる反物は、ひと月にたった2反。その2反の中のひとつがこちらのお品です。 菊池さんの全てが注ぎ込まれ作られた、現代に息づく江戸小紋。 ぜひお手にとって、菊池宏美さんの世界を感じていただきたいと願う作品です。