染織家 築城則子作 小倉織 袴 縞木綿「克」|店主 泉二弘明のおすすめの逸品

染織家 築城則子作 小倉織 袴 縞木綿「克」|店主 泉二弘明のおすすめの逸品

店主 泉二弘明のおすすめの逸品
染織家 築城則子作 小倉織 袴 縞木綿「克」

今月の泉二弘明のおすすめの逸品は、北九州市の豊前小倉に工房を構える、日本工芸会正会員でもある染織家 築城則子(ついきのりこ)さんの小倉織による「袴」作品のご紹介です。

「袴」作品をご紹介させていただく機会は、銀座もとじでも初めてのことで、この度の初個展催事のために素晴らしい袴作品をお作りいただきました。

築城則子さんは、1984年(昭和54年)に小倉織を復元された作家です。小倉織とは、江戸時代の豊前小倉藩(現在の福岡県北九州市)に人気を博した縦縞の柄が特徴の、良質な生綿の糸を撚り合わせて織られた大変丈夫で上質な木綿の織物です。

2015年3月、北九州市小倉の築城則子さんの 工房を訪れた店主泉二
2015年3月、北九州市小倉の築城則子さんの工房を訪れた店主泉二

江戸時代に盛んに織られ、武士の袴や帯として人気を博していた小倉織でしたが、昭和初期には途絶えてしまい、幻の織物となってしまいました。

染織の勉強のためにあちこちの骨董屋さんに通っていた、築城則子さん。北九州市内の骨董店で、見たこともない古い小さな布に出会い、そのしっとりとした手触り、木綿の生地でありながら絹のようにも思える光沢を放つ美しい縞模様のその布に衝撃を受けたそうです。

築城さんを釘づけにしたその小さな布こそ、幻の織物となっていた、“小倉織(こくらおり)”だったのです。経糸に色の濃淡でくっきりとした縞模様が浮かび上がるなめし革のような質感、光沢感、丈夫さ。この織をぜひ復元させたいと思い、研究を重ね、1984年(昭和59年)、その復元を果たします。2007年(平成19年)、小倉織を販売する「遊生染織工房」を開設してからは、2007福岡産業デザイン賞の大賞など、数々の受賞を重ねられています。

今月、“泉二弘明のおすすめの逸品”でご紹介する作品は、『克(かつ)』と題された美しい小倉織の袴。光を含んだような美しいブルー、こげ茶、白茶、珊瑚、暗赤を用いて織り成された縞模様。きりりとシャープな青が、やわらかで美しい濃淡を放ち、神秘的にさえ感じます。染色はすべて草木染めながら、自由自在に色彩表現を可能にする築城さんの技は本当に見事です。

染織家 築城則子作 小倉織 袴 縞木綿「克」
また、直線からなる縞なのに、不思議と躍動感を感じさせるような、動きとリズムがあり、その豊かな表情に驚かされます。

この作品のタイトルに込められた、「克(かつ)」とは、“力を尽くして事をしとげる”といった意味を持ち、

克明、克己、 超克、克服といった、丹念、力強さ、超越、困難に立ち向かう、打ち勝つといった意味を感じ取ることができるのではないでしょうか。

築城則子さんが魂込めて織り上げた小倉織の袴を身につければ、人生に起こるどんな困難にも打ち克つ力をさずけてくれる、かもしれませんね。

築城則子さんが織り奏でる経縞はまるで「音色」のようです。常に今という時代を意識し、感覚を注ぎ込む、その迷いなき姿が重なる織りの美しさをぜひこの機会にご堪能ください。