日本刺繍 森康次作 羽衣羽織「風神雷神」(広巾) |店主 泉二弘明のおすすめの逸品

日本刺繍 森康次作 羽衣羽織「風神雷神」(広巾) |店主 泉二弘明のおすすめの逸品

店主 泉二弘明のおすすめの逸品
日本刺繍 森康次作 羽衣羽織「風神雷神」(広巾)

「羽衣羽織」、それは、天上を優雅に舞う天女の衣のような、羽毛のごとく軽やかな薄手に織られた透明感ある織物に、繊細で品のある刺繍をほどこした、息を飲むほどに美しい羽織作品です。

柔らかで上品な地色に森氏の繊細で巧みな刺繍の技が際立ちます。文様は全てオリジナルデザインの刺繍によるもの。2012年に開催された森康次氏の個展催事において、初めてこの羽衣作品が誕生いたしました。その際に、大変な人気を博し、お客様からの熱いご要望にお応えし、毎春制作をいたしております。

蝉の羽根を思わせるような透明感のあるしなやかな透け感。清々しい品格がお召しになる方の身体をそっと包み込み、心まで澄み渡るようです。極上の薄衣、幸福な時を感じていただける薄羽織です。

森康次さんの縫技は、その独特な、優しく愛らしさに満ちた色彩世界と意匠表現が特徴ではないでしょうか。表現したいと思う色柄を繍技によって自在に表すことができることは、たしかな技と感性に満ちているからこそ。のびやかで活き活きした刺繍の表現には、心が踊ります。

日本刺繍 森康次作 羽衣羽織「風神雷神」

今月の逸品では、力強くも少しコミカルで親しみさえ感じられる、「風神雷神」の刺繍が施された羽衣羽織をご紹介しています。全体を薄濃淡のむらぼかしを染め上げた、これまでの無地染に一工夫を重ねた作品です。刺繍の彩りは、グレー、茶、藍ねず、紫、ベージュ、グリーン、黄。刺繍糸の彩りの繊細な変化もほれぼれしてしまいます。寸分の狂いもない精緻な刺繍表現、刺繍ならではのほのかな立体感が存在感を高め、繊細な透け地に繊細な刺繍をほどこした卓越した技が光る逸品です。

風神雷神とは、風と雷が、神格化されたもので、風神は手には風袋を,雷神は雷太鼓と法具の独鈷杵を持ち、風神と雷神を描いた絵画では、俵屋宗達筆の屏風画が有名です。琳派の絵師をはじめとする多くの画家によって描かれてきた「風神雷神」は、観る人を引きつける独特の迫力と魅力があります。

森康次さんによる「風神雷神」は、今にも羽衣羽織から立ち上がって宙を動きだしそうな縫糸の色選び、表現性が素晴らしく、見れば見るほどに、刺繍の美しさ、そして力強さの中にどこか愛嬌さえ感じられる活き活きした表情には、心打たれるものがあります。

また、今回制作された限定の羽衣羽織には、水色グレーの「蒼鳳凰」、爽やかな水色グレーの羽衣に、雲間に伸びやかな鳳凰たちが飛び交う美しいデザインのひと品。刺繍の彩りは、水色、藤ねず、黄など、わずかに違う微妙な色彩の変化でほどこされています。

日本刺繍 森康次作 羽衣羽織「蒼鳳凰」

そして、黒地の羽衣に、シャープな幾何学文様が表現されたデザインの作品「相文」。刺繍の彩りは、藍ねず、深緑、アイボリー、焦茶、グレーの洒落た中間色。黒地に施された動きを感じさせる幾何学文が、大人の男性の格好良さを引き立ててくれるひと品です。

日本刺繍 森康次作 羽衣羽織「相文」

こちらは、深みある墨色と深緑の中間のようなお色目の羽衣に、だるまたちが表情豊かに表現されたデザインです。刺繍の彩りは、グリーングレーの濃淡の、わずかに違う微妙な色彩の変化でほどこされています。なんと愛らしいだるまたちでしょう!いまにもなにか思いを語りだしそうなだるまたちの羽衣羽織は、纏えば良い縁起をたくさんもたらしてくれそうです。

日本刺繍 森康次作 羽衣羽織

こちらは、品の良いシルバーグレーの羽衣に、蝙蝠たちが遠近感豊かに表現されたデザインです。刺繍の彩りは、薄墨濃淡や、そこへほんのり藤色を含めたものなど、わずかに違う微妙な色彩の変化でほどこされています。なんとも美しい刺繍。蝙蝠たちは、シルエットの中に濃淡で表されていますが、まるでこちらをまっすぐ見据えながら飛行しているかのような豊かな表情を感じさせます。

日本刺繍 森康次作 羽衣羽織

どれも刺繍の美しさ、刺繍糸の彩りの繊細な変化には、ほれぼれしてしまいます。お手にされたら、その極細の糸の風合いと、まるで手にしていないかのような軽さに想像以上に驚かれるはずです。

また刺繍の裏処理も大変丁寧で、表と見まごうほどです。単衣でお召しになられる羽織だからこそ、裏の処理も気遣われる、森康次さんならではのあたたかなお気持ちが完成度の高さに伝わります。男女各限定数、オリジナルデザインでの制作です。きっとご満足いただける、銀座もとじ自信の逸品です。