人間国宝・北村武資作 角帯「帛(はく)」|店主 泉二弘明のおすすめの逸品

人間国宝・北村武資作 角帯「帛(はく)」|店主 泉二弘明のおすすめの逸品

店主 泉二弘明のおすすめの逸品
人間国宝 北村武資作 角帯「帛(はく)」

今月の泉二弘明のおすすめの逸品は、「羅」と「経錦」の二つの重要無形文化財保持者である北村武資氏による、高度な織技による品格をたたえた希少な角帯作品「帛(はく)」のご紹介です。

人間国宝 北村武資氏の優れた織技をご堪能いただける角帯作品との出会いは、大変希少でそれゆえに価値が高められます。こちらの作品は、『帛(はく)』と呼ばれる織種の角帯で、平織基本の綴れ組織によるものです。絹の光沢が美しい立体的な変わり織りがほどこされ、お色目は上品な落ち着きのあるベージュグレーのまろやかな色調が表現されています。

人間国宝 北村武資作 角帯「帛(はく)」

その風合いは、なんともいえないしなやかさがあり、身体に添う織の生地感は極上の着心地を伝えます。また、片方の手先には『武』の落款がほどこされています。
人間国宝の世界では「世襲」か「師匠について長年修業を積んで身につける」かの二通りの道が大多数を占める中、 北村武資氏は15歳の時から精進した西陣織の技術を駆使して、誰からも教わることなく、ただ独学で自身の道を築き上げました。

1972年、「長沙馬王堆漢墓(ちょうさまおうたいかんぼ)写真速報展」で出会った「羅(ら)」という織物。その幻想的な美しさに魅せられ、しかもそれが2000年前の人々の生活の中で生きていた美しさであったことに感銘を受けた北村氏。それから、そこで見た写真のみから推測して羅を復元したということに驚かずにはいられません。

羅を自在に織ることができるようになった北村氏が、次に目指したのは「経錦(たてにしき)」の復元でした。「経錦」も中国の唐の時代に日本へ伝わりましたが、製織が比較的容易な緯錦が主流となり、奈良時代以降には織られなくなった織物です。

権威のあるさまざまな発表の場で数々の受賞歴を重ねてきた北村武資氏、しかし、その仕事は単なる古代製織技法の復元のみではありません。北村氏の織物は『現代に生きる織』と言われます。古代とは全く違う独自の世界を探求していきます。織技の解明、継承を求めつつも、現代の街に合う色や地風を作り上げる。かつて古代中国の人々の中で羅が生きてきたように、現代の人間が現代に生きる織物を現代感覚で作り出していかなければならないと考えているのです。

写真左から、人間国宝 北村武資氏、工芸評論家 外舘和子氏、店主 泉二弘明
写真左から、人間国宝 北村武資氏、
工芸評論家 外舘和子氏、店主 泉二弘明
工芸評論家の外舘和子氏は、【和織物語】「織の構造美を創造する 北村武資の世界」の中で、北村武資の作品を纏うことについてこう述べています。

「“北村武資を着る”ということは、常に染織の最前線に立って挑戦し続けてきたこの作家の格調高きアヴァンギャルドの精神を共有するということにほかならないのである。」

古代の織技法のあくなき探求の上に、現代に生きる織物としての表現を見出し、素晴らしい作品をつくり続けてきた北村武資氏の織世界。その究極の織の美を堪能し、北村武資氏の”格調高きアヴァンギャルドの精神”を共有していただければと心より願っております。