店主 泉二弘明のおすすめの逸品
純泥染 大島紬 「幻の200亀甲」疋もの・広巾

“亀甲”とは、亀の甲羅に似た六角形をした文様を表し、結城紬や上布、久留米絣などでも織られる不動の人気を誇るお柄です。細かな亀甲絣には、どこか古典的な重厚感さえ感じられ、一朝一夕には無しえない、技術の粋が集められた確かさと、また長い歴史の中で人々に愛され続けてきたお柄としてのぬくもりある魅力が放たれます。
ひとつの亀甲は、約2mm。大島紬では、世界に類を見ない、特殊な絣を施すための機である「締機(しめばた)」を用いて絣を括り、調整針を用いながら、細かな絣を合わせて織り上げていきます。この40cmの幅の中に200も六角形の亀甲の並んだ、想像を絶するような緻密な仕事は、純泥染から締機、機織りと、すべて手仕事で進められます。気の遠くなるほどの時を経て、一枚の布として完成する奇跡のような素晴らしい作品に出会え、身に纏うことができることは、着物ならではの最上の喜びです。

また、何よりも上質な泥染大島紬の特徴として、泥染の色味が、うっすらと黒に赤みを帯びた深みとぬくもりのある色を呈します。大島紬の泥染には、テーチ木(車輪梅)という木の幹や根を細かく砕いた小片を煮出した液を用いて染めることと、泥につけて染めることを繰り返して、黒に染まった大島紬が出来上がっていきます。
テーチ木を染料とし、奄美大島の泥に含まれる鉄分による鉄媒染によって、糸が独得の黒褐色に染まっていきます。このテーチ木染めと泥染めを100回以上も繰り返すことによって、泥染めの色に深みと味わいが増していくわけです。
同じ泥染大島紬でも、作品によって染め具合の差は大きく、こちらは、緻密な絣紋様を実現しながらも味わいと深みの感じられる染め色に仕上がった上質さが感動的なひと品でございます。「純泥染」の証紙が、その染めの上質さを証明しています。
また、≪疋もの≫ですので、”着物2反分”の長さがございます。着物と羽織でアンサンブルでもお楽しみいただけますし、ご夫婦で分けられても素敵でございます。

卓越した職人技によってしかなしえない、まさに幻のような手業による究極の逸品「幻の200亀甲、純泥染 大島紬」。ぜひ終生、そして代々と、ご愛顧いただけましたらと願う特別な織物です。