第七回:”ものづくり”の最終走者として お客さまと作り手をつなぐ

男のきもの入門~きもの生活のすすめ~第七回

着物は日本各地で、それぞれの作り手によって、色々な工程を経て作られています。
私は創業以来、多くの作家や産地の作り手たちのもとへ赴き、
“自分の目で見て、自分の耳で聞き、自分の手で触れ、そして自分の言葉で話す”
をモットーに、ものづくりへの想いや製作過程を学んでまいりました。

作り手の方々の想いを知れば知るほど、“ものづくり”の最終走者となる私たちの役割は大きな責任を伴うと感じ、「作り手の想い」をお客様に正しく伝えつづけようと努めてまいりました。そして今度は、「お客さまの声」を作り手に届ける取り組みを始めたのです。

例えば、私の出身地の奄美大島の場合、着物が完成するまでのそれぞれの工程において各職人による“分業体制”によって制作されています。デザインを考える「図案師」、絣模様をつけるために織る「締機(しめばた)師」、「泥染師」、「織り手」などによって、ひとつひとつの工程を進めていきます。そのために、それぞれの職人が携わったものが、どのように完成したか、またどのような色や柄のものが最近では人気があるのかということを、作り手の方々が把握することが難しい現状があります。

そこで、8年前から毎年、お客さまによる大島紬の人気投票を行ってきました。展示に掲げるのは値段ではなく、その着物を作った「図案師」、「締機師(しめばたし)」、「泥染め師」そして「織り手」の4人の名前。投票結果が出たら奄美大島に行き、それぞれ上位3位の計12名を表彰します。
大島紬作品展(2007年)。店主 泉二による、人気投票の結果発表。

第1回目は作り手たちの涙で幕が下りました。「作ったものが形になったのを初めて見た!」「こんなふうに認めてもらえるとは・・・」とのうれし涙でした。それからは、自分の工程だけに専念していた職人の方々が、完成した全体像やお客様の姿を頭に描いて、ものづくりをするようになったのです。

大島紬の作り手たちには、年に1度は店へ来て「時代の風」を感じてほしいと伝えています。感動があれば、より良い作品が生み出せる。そのために、お客さまと作り手、双方をつなぐパイプ役になりたいと強く思うのです。双方の想いに直接触れられる、私たちだからこそできることだ、と。

2012年2月25日、念願の大島紬専門店「銀座もとじ 大島紬」をオープンいたしました。今この大島紬に力を注がなければ、貴重な技術の継承は途絶えると思い「大島紬の復活と可能性」をテーマとした店づくりを目指しています。