2012年8月2日(木)〜5日(日)まで、銀座もとじにて『仁平幸春展 更紗文様 〜草花の詩情〜』を開催させていただきました。 8月4日(土)には、仁平幸春さんをお迎えして、ぎゃらりートークを行いました。
イタリア料理で“日本人”を再認識し、染色の道へ
昭和40年生まれ。小さな頃からものづくりが好きで、都立工芸高校デザイン科へ進まれた仁平さん。卒業後はファッションメーカーで靴下のデザインの仕事に就かれましたが、 半年で退社。その後、進んだのは染色の道ではなく、子供の頃から好きだった料理の道でした。イタリア料理の有名店などで8年間、料理人として修行を重ねられていく中で、自分の大きな視点に気づかれたそう。「鴨料理をしていても、こってりとしたソースではなく、さっぱりとしたわさび醤油を合わせてみたくなる。
29歳、6畳の部屋から独立の道へ
ここで迫られた二つの選択。ただ働き同然であっても師匠の元で仕事をするか、思い切って独立するか。仁平さんが選んだのは“独立の道”。「24歳ですでに結婚していたので、その道しか選択肢はなかったのです。」 29歳、独立。とはいえ当時は大きな工房など持てるお金もなかった仁平さん。工房は自宅、アパートの6畳の部屋しかありません。6畳でできるものはせいぜい小物。(着物を作るためには13mほどの生地を一直線に張るため、その長さのスペースが必要です)仁平さんはまずはそこでできる範囲のものを懸命に作り、自ら小売店へ作品を持ちこみ、営業もしたそう。この営業力。
『銀座もとじ』との出会い、お付き合いはもう15年
ちょうどその頃、仁平さんが営業で作品を持ちこんでくださったのが「銀座もとじ」でした。「さまざまな店をまわっていましたが、『銀座もとじ』は“実験的なもの”を受け止めてくれる店として作り手の中でも 知られていました。当時からわたしの作風は今と変わらず、ちょっとくせ(個性)があるので、小売店によっては 好みが分かれることがあったのですが、『銀座もとじ』なら自分も受け入れてくれるのではと思いました。」店主 泉二も、他の作家とはひと味違うオリジナルな作風に惚れ、意気投合。それからお付き合いはもう15年になります。そして、仁平さんには、銀座もとじの毎年5月の恒例行事、銀座で唯一の小学校、泰明小学校での“銀座の柳染め体験授業”にもお手伝いいただき、もう12年になります。また、2006年にオープンした銀座4丁目の『和織 和染』店の4色の“四季のふすま”を染めていただいたのも仁平さんです。
『更紗』をテーマにした個展、遊び心がいっぱい
繊細なものから大胆なものまで、幅広い作風とユニークな創造力で人気のある仁平さん。現在の制作活動には“料理人”という前職から学ぶことが多いそう。「素材に自分のやりたいことをリンクさせて、形にして、提供すること。これは料理も含めた工芸すべて一緒だと思っています。」 その作風、想いは独立当初から変わらないと言います。 今回の個展は『更紗』をテーマに作品づくりをしていただきました。『更紗』と一口に言っても、そのテイストはやはり仁平さんならではのもの。エキゾチックな唐花の中に小さな動物たちを見え隠れさせたり、花たちが星空の下で授業をしていたり、と大人の遊び心がいっぱいに込められています。
【もとじ綿】 「花の授業」
【もとじ綿】 「格子と花束」
【もとじ綿】 「短冊」
『もとじ賞』の作品を、仁平さんが帯として制作
また、今回は“特別な作品づくり”もお願いしました。2012年1月27日(金)〜3月14日(水)に文化学園服飾博物館にて開催された「ペイズリー文様 −発生と展開−展」に合わせて行われた「ペイズリー文様デザインコンクール」(応募資格:文化学園に所属する学生・職員)に銀座もとじが協賛、『もとじ賞』という特別賞をもうけさせていただきました。