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もっと知りたい!樹田紅陽さんの刺繍の世界《直前レポート》(2018年公開)

※こちらは2018年に公開した記事です。

11月23日(金・祝)よりいよいよ「刺繍美 三世 樹田紅陽の世界」展がはじまります。 作品はもうご覧いただけましたでしょうか。(これから入荷の作品もあります) 銀座もとじでは初めてのご紹介となり、まだベールに包まれる部分も多い樹田紅陽先生の刺繍の世界をもう少し詳しくご案内いたします。 ※さらに「もっと知りたい!」とご興味の湧いた方は、ぜひ24日(土)、25日(日)の作品解説会へご参加くださいませ。(ぎゃらりートークはキャンセル待ちです)

1.必見!催事期間中は非売品のお軸、飾り匣、額装を特別展示

個展に先立ち、スタッフが工房へ訪問させていただきました。京都市上京区、西陣にほど近い町家の一画にある工房には、藤の刺繍をほどこしたお軸や煌々と輝く飾り匣などの造形作品が並び、神聖な空気に包まれていました。ぎゃらりートークや作品解説では工房でのものづくりについてお話を伺います。また23 日(金)〜25(日)の催事期間中は、ご来店の皆様に非売品のお軸、飾り匣、額装の実物をご覧いただく予定です。ぜひお楽しみに。

2.祇園祭「山鉾の胴掛け」とは?

樹田紅陽さんは、京都・祇園祭の保昌山の胴掛類の復元という大業を果たされたことでも知られています。祇園祭といえば山鉾巡行。山鉾はそれぞれに豪華な装飾が施されており、まさに「動く美術館」と呼ばれるにふさわしい絢爛さです。中でも保昌山の山鉾は円山応挙の原画を踏まえた名品といわれ、その前掛、左右の胴掛、後掛は四面のすべてが刺繍で表現されています。
山鉾
※写真はイメージです。
保昌山の山鉾は下記よりご覧いただけます 「公益財団法人 祇園祭山鉾連合会」ホームページはこちら http://www.gionmatsuri.or.jp/yamahoko/hoshoyama.html

3.樹田紅陽さんのこれまでの道のり

「和織物語」でもご紹介のように、樹田紅陽さん(本名:樹田次男さん)は1948年、祖父の初世・樹田紅陽(樹田国太郎)さんが始められた繍業を営む家に生まれました。その後家業をお父様が引き継がれましたが、樹田さんが大学在学中に病に倒れ半身不随に。その後、お父様作の繍衝立、美村元一氏の作品との出会いをきっかけに本格的に刺繍の道へ入ることを決意され、美村元一氏、さらに間所素基氏に師事。1988年、三世・樹田紅陽を襲名されました。東大寺や国立京都迎賓館などの文化財修復を手がけられる一方で、素繍いによる帯や着物、芸術性の高い造形作品を制作されています。

 

4.切畑健先生との関係について(『和織物語』著者)

今回の「和織物語」は特別に、京都国立博物館名誉館員の切畑健先生に執筆いただきました。博物館の図録などに寄稿される切畑先生が、異例ながら一小売店のために執筆してくださったことに感謝の念が堪えません。切畑先生は、樹田紅陽さんの京都市立芸術大学の先輩にあたり、京都国立博物館に学芸員として勤務されていた頃よりずっと樹田さんの仕事を見守ってこられました。当時、京都国立博物館には祇園祭の重要な祭具一式が寄託されており、保昌山の胴掛類の新調の際、復元された刺繍を初めて目にしたときの感動を、「繍作品の向こうに、原画の本質を見据えているのである。応挙という芸術家と対峙する樹田がいるのである」と述べられています。(『季刊銀花2008年夏 第154号』文化出版局 より)樹田紅陽さんの初個展(2000年)の際も挨拶文を寄せられるなど、長きにわたって深い信頼の絆で結ばれていらっしゃいます。

 

5.技法解説 − この作品にはこの繍い技法

京繍の歴史は平安遷都からの1200年を遡ります。一本の糸と無数の色が綾なす刺繍は、平安貴族の十二単から室町時代の能装束、安土・桃山時代の小袖へと絢爛な衣装を彩ってきました。繍の技法は約50種。今回の個展でも、多様な繍技を組み合わせて制作くださっています。その一部の技法をご紹介します。
組ぬい、ぬいきり、駒ぬい、菅ぬい、切押え、駒ぬい

(左)組ぬい、ぬいきり、駒ぬい

「組ぬい」は組紐を組むように左右から交互に繍っていく技法で、江戸時代に腰巻(高級武家女性の夏の正装)や袱紗に使われていました。

(右)菅ぬい、切押え、駒ぬい

布目の緯糸の谷に糸を沿わせて繍う「菅ぬい」は、唐撚り糸、諸撚り糸など、糸の太さや撚りを変えることで妙味が生まれます。明治時代の写生調刺繍の影響を受けた技法です。
天鵞絨ぬい、まついぬい、菅ぬい、割付ぬい、十字ぬい

(左)天鵞絨ぬい

布上に針金をのせて巻ぬいをし、その上辺を切って毛羽立たせる技法。江戸時代の祇園祭の幕にも用いられています。

(右)まついぬい、菅ぬい、割付ぬい、十字ぬい

細い曲線にはまついぬい、面の表現には十字ぬい。四種の繍いを組み合わせることで空間性をもたらしています。

6.樹田紅陽さんの言葉

樹田紅陽さんのお人柄やものづくりへの姿勢が感じられる素敵な言葉を集めてみました。24日(土)と25日(日)はご在廊くださいますので、ご来店の際にはぜひ樹田紅陽さんとお話をして、お人柄や思いに触れてください。 「一見控えめ、でもよう見たら、ここまで(緻密に)やってるという仕事をしたい」 「(師の間所氏が)『刺繍というのは禅修行と同じや』とよく言うておられましたね」 「祇園祭の掛幕は、時代を超えて技を競い合ってきた、技法の宝庫なんです」 「1ミリも揺るがせにできない仕事でありながら、でき上がったものは、遠くから見るので、ダイナミックさも必要です」 「『僕ができなかったことをしてほしい。職人仕事でなく、刺繍で芸術的表現をしてほしい』と。その言葉を大切にして、やって行きたいと思ってるんです」 (以上、『季刊銀花2008年夏 第154号』文化出版局 より抜粋)

刺繍美 三世・樹田紅陽の世界|10月催事

京都で繍を司る樹田家。初世・紅陽(樹田国太郎氏)の孫として生まれ、京都市立芸術大学西洋画科卒業後、二人の師より繍表現を学び、39歳で三世・樹田紅陽を襲名。
祇園祭の山鉾「保昌山」胴懸類の復元や国立京都迎賓館内の几帳刺繍制作など、文化財修復にも携わり、深淵なる伝統を仰ぎながらも、現代に生きる刺繍美として革新性を宿した作品を手掛けています。
一針、一針の集積が軌跡となる樹田氏の世界をぜひ、ご高覧ください。

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