銀座もとじのものづくり

茨城県結城市 結城紬
2017年11月6日重要無形文化財「本場結城紬」工房見学~結城紬の心地良さの秘密

立冬を迎え寒さが増してくるこの季節、銀座もとじでは「結城紬展」を2017年11月17日(金)~19日(日)に開催いたします。それに先立ち、軽やかで暖かく、着るほどに風合いが増していく結城紬の魅力を、明治40年創業の「奥順株式会社」さんに伺ってまいりました。

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「真綿の効用」~軽くて暖かい、本場結城紬の魅力

「真綿の効用」という言葉をご存知ですか?真綿のように心地よいものに触れると良い脳波が流れるということを、そう表現するそうです。
結城紬の特徴のひとつとして、手紡ぎした真綿糸で織られていることがあげられます。真綿(袋真綿)とは、繭を引き伸ばしてふわふわの袋状にしたもののこと。ふわふわの真綿を、撚りをかけずにふっくらと紡いで糸にし、空気をたくさん含んだ糸を優しく手織りしたものが「本場結城紬」です。

経糸が目立つのは緯糸が細い証

経糸が目立つのは緯糸が細い証

「軽くて暖かい」といわれる結城紬ですが、実際に着物一反の反物の重さは、生糸で作られる反物に比べ100グラムほど軽く、絣柄が細やかになるほど、つまり糸が細くなればなるほど軽くなります。(細い糸は糸紡ぎ、絣糸作り、織りの全てが難しくなるため希少価値が高い) 手作業による伝統的な技法が守られており、地機(いざり機)で織られたものについては1956年に国の重要無形文化財に指定されています。また、撚りをかけない糸で作られる布は世界でも珍しく(結城紬のみとも言われています)、その技術の文化的価値から2010年にはユネスコ無形文化遺産として登録されました。

結城紬の歴史と産地

結城地方での織物の歴史は2000年前の奈良時代まで遡り、朝廷に献上されたものが今も正倉院に収蔵されています。「結城紬」と呼ばれるようになったのは鎌倉時代。領主・結城氏が織物の育成に努めたことからその名がついたといわれています。

関東平野の中央・筑波山の裾野を流れる鬼怒川沿いは肥沃な土地で、古くから養蚕が盛んだったそうです。現在は、茨城県結城市を中心に、茨城県から栃木県にまたがる鬼怒川沿いの約20 kmの一帯が結城紬の産地となっています。かつて鬼怒川は「絹川」と呼ばれており、結城地方では養蚕にまつわる地名が多く見られます。

今回訪問させていただいた「奥順株式会社」さんは、この結城市で明治40年に創業され、風合い豊かでデザイン性の高い上質な結城紬を作られている織元さんです。

手くびりして染めた絣糸(左) 精緻な絣を地機で織り出す(右)

手くびりして染めた絣糸(左) 精緻な絣を地機で織り出す(右)

重要無形文化財指定の結城紬ができるまで

手織りの「本場結城紬」には、高機で織られているものと地機(いざり機)で織られているものがあります。高機は最も一般的な手織り機で、現在世界で作られる手織り布の99%が高機で織られているそうです。一方、地機は世界最古の織り機といわれ、経糸を織り手の腰にくくりつけて、人間が機と一体となって織り進めるために大変な労力を要します。しかし経糸のテンションを微妙に調整しながら糸に負担をかけずに織ることができ、細い絣糸による繊細で贅沢な美しさはかけがえのないものです。
一反の結城紬が完成するまでには20以上もの工程がありますが、今回は国の重要無形文化財の指定条件となっている三つの工程を中心に見学させていただきました。

(1)使用する糸はすべて真綿より手つむぎしたものとし、強撚糸を使用しないこと

質の高い糸を作るため、乾燥させていない生きたままの繭を湯につけながらほぐして(生掛・なまがけといいます)5粒から一つの真綿(綿ぼうし)をつくり、それを50枚合わせ1ボッチと呼ばれる塊をつくります。それを7つ用意すると、ちょうど一反分になります。

次に「つくし」と「をぼけ」という専用の道具を使い糸作りをしていきます。1ボッチを「つくし」に引っ掛け、唾液で指先を湿らせて撚りをかけずに糸を引き出し「をぼけ」の中に糸が絡まないよう螺旋状に重ねていきます。撚りのない糸は水で湿らせると乾燥した時に真綿状に戻ってしまうため、タンパク質を含み粘着性のある唾で湿らせるのだそうです。女性7~8人が手分けして一反分の糸を紡ぎます。

(2)絣模様を付ける場合は手くびりによることと

「手くびり」とは、糸に防染用の木綿糸を巻きつけ括ることです。昔も今もこの「手くびり」は男の仕事で、手紡ぎと地機は女性が担います。
昔の結城紬は無地が多かったそうですが、「方眼紙」の登場以降、亀甲・格子・十字絣を用いた多様なデザインが可能になりました。絣模様の細かさに応じて括る数も、括る木綿糸の幅も変わり、細かい絣柄になるとなんと10万箇所も括るとのこと。根気を要する作業です。
結城紬では、植物染料を使うことはほとんどありません。草木染めではくっきりと絣柄が出ず、細かい模様には適さないそうです。また、職人の括る癖に合わせて、染め職人が染め加減を変えることもあるとか。あうんの呼吸が分業でのものづくりを支えています。

(3)地機で織ること

最古の機織り機といわれる地機は、国の重要無形文化財やユネスコ無形文化遺産登録の条件になっています。細い絣糸を丁寧に繊細に織りだしていくためには、糸に優しく、経糸のテンションを調整しやすい地機が用いられます。
また地機で織られる場合、独特な凸凹が生地の表面に生まれるのも特徴のひとつです。少し専門的になりますが、高機は2つの綜絖が同時に上下に動き、経糸が緯糸を包み込むように織られていくのに対し、地機の場合は綜絖が一つしかないので、緯糸が経糸を包むように織られ、緯糸の表情が表に出ることで豊かな地風を作り出します。
本場結城紬では、地機・高機のどちらも緯糸に2種類の糸を使います。桜や樫の木でできた600gほどの重量がある杼を2つ使い(二丁杼)不均一な太さの糸を、2種類の糸を織り交ぜることで味わいを出しながらも均一性を高めているのです。結城紬は、無地であっても手の込んだ作業を要求されます。真綿糸は筬が滑りづらく、織り進めるのは他の紬織りに比べても時間がかかるのだそうです。

本場結城紬の証紙の見方について

「あの結城とこの結城は、価格がずいぶん違うけれど、一体何が違うの?」
お客様からもよく質問を受けることですが、あらためて、価格差に現れる製法の違いなどを証紙に基づいて伺ってきました。
まず手織りか機械織りかは、糸質や風合い、価格に大きく反映してくるところです。手織りであれば、本場結城紬の証である「結」の文字が入った証紙と、手紡ぎ糸100%の証紙が貼られています。太細のある手紡ぎ糸は機械織りに適さないためです。
また、一番右の証紙には「地機」「高機」の記載があります。無地は高機であることが多く、絣柄は地機で織られていることがほとんどです。

左から、本場結城紬 合格の証(縮織)/ 真綿手紡ぎ糸100%の証(重要無形文化財技術)/手織り本場結城紬のマーク(機械織りは「結」ではなく「紬」)/手くびりの証(重要無形文化財技術)、織元屋号/高機または地機の記載

結城紬の工程を見学させていただいて、単に昔ながらの技法を守っているのではなく、結城紬ならではの至福の着心地や風合いを求めると、手仕事でのものづくりが必然であることがわかりました。軽くて暖かく、優しく身体に馴染んで着崩れしにくい結城紬は、日常を特別にしてくれる最高に贅沢な「ふだん着」です。三代まで着られるほど丈夫(実際に祖父様の美しい結城紬を拝見しました)と言われますから、臆することなく頻繁に纏って、経年とともに風合いを育てるのも醍醐味ではないでしょうか。

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11月催事 結城紬展