『吉田美保子展 -Spring-』 〜ぎゃらりートーク〜
2009年3月20日(金)〜25日(水)まで、銀座もとじ【ぎゃらりー泉】にて開催される 『吉田美保子展 -Spring-』。 3月21日(土)、22日(日)には吉田さんを迎えての「ぎゃらりートーク」が催されました。
まず、今回の企画展のテーマ“Spring(スプリング)”への想いについてお聞きしました。
「“Spring(スプリング)”の意味ってとってもたくさんあるんですよ。
・春
・草木が芽を出す。始まりの。
・飛躍する
・泉。水源。湧き水。
・勢い良くあらわれる
・弾力。スプリング。
・元気。しなやかさ。柔軟性。はつらつさ。
など、“ぱん!っと涌き出る”っていうイメージなんです。そこでこのイメージを画像にすると どういうものかなと考えたとき、思いついたのがボッティチェリの『ヴィーナス誕生』という 一枚の絵でした。海で生まれたばかりのヴィーナスが貝に乗って海の上をすーっとすべって、今、 ここに現れた瞬間を表現した絵。まさに“涌き出た”瞬間なんですよね。 その生まれたばかりの裸のヴィーナスを包む布はどんなものかなって考えて、 さらにヴィーナスがヨーロッパ大陸を車で旅をしながら服をチェンジしたら、 とどんどんイメージを膨らませて、この「ヴィーナス誕生」という作品を作りました。」
独特の創造力。聞いているだけでわくわくしてくる吉田さんの発想のヒントは、 これまでのご自身の経験からくるのでしょう。 熊本県出身の吉田さんは20歳の頃、画家を目指しヨーロッパへ。23歳で帰国後、 その後、染織と出逢い、この道に入りました。 それからも、アート、音楽、文学、哲学など、様々な分野の人や文化、情報に触れている吉田さん。 こういった多方向のアンテナや敏感な感性により、絵画をはじめ多様なイメージの作風が出来上がってきたのです。
「イメージは様々なものから。でもそれを着物として制作する段階では、着物として美しいものへ計算して再構築します。 現在の方の話を聞くことも大切にしていますし、昔のきもの雛形本もよく見ています。 伝統的に続いている意匠性はやっぱり美しいから。伝統の構図は、着姿を美しく見せたりして、 やはりすごいなと思うものがたくさんあります。」
吉田さんの作品を見ると、作風の個性と同時にあることに気付きます。 それは作品についているメッセージがいっぱい詰まった茶色い紙札です。 題名や少しのコメントが書き添えられたものは見かけますが、これほどびっしりと書き込まれた紙札は ちょっと珍しいもの。黒いマジックペンで、英語と日本語を交えて書かれています。 これにはどんな想いがあるのでしょう。
「作品は想いがないと作れないんです。わくわく、どきどき、高揚感がぐーっと一つに合わさって作品が出来上がります。 その想いを丁寧に伝えたい。もちろん、作品だけでも十分なのかもしれないですが、 言葉や説明は私の想いをさらに伝える、助けてくれもの。 私は自分の作品や文章などで、目にする人にも一緒にわくわく、どきどきしてもらえたら嬉しいなと思っていて。 だからプラスαの言葉や説明は、より楽しんでもらうための“エッセンス”なんです。 頑張っているブログもそうで、「てにをは」がおかしいときもあるけれど、そのままUPしちゃう時もあります。 その時はそう想ったからOK.高揚感が伝わる方が大切かなと思って。 気持ちが伝わって、皆さんが楽しくなってくれたらとても嬉しいです。」
吉田さんの笑顔からはいつも想いがいっぱいにあふれています。 お話を聞いているだけでこちらもわくわくしてきます。 吉田さんの創作現場は、東京のアパートの一室。 狭い部屋ながら工夫をたくさんして織機を使いこなしているそうです。 その織機について、ちょっとおもしろいエピソードをお伺いしました。
「織機の形って鳥居の形に似ているいると思っていて。 鳥居は手前が俗世間、向こう側が神聖な世界。それで織機も、 私が座っている場が俗世間で、これから織られる糸が巻いてある向こう側が神聖な世界だなって思うんです。 機を織るときの『トントン』という音も、神社の鈴の『シャリシャリ』という音とリズムが似ていて。 だから織っていると神聖な気持ちになるんですよ。 まだまだだけど、もっとそれが実感できるようになれば、もっと素敵な織りができるようになるのではと思っています。」
“素敵な織り”とは、霊が宿ったような織物、それを『霊衣(たまぎぬ)』というのだそうです。 「以前、漢字を調べていたときに、私の名前の「美保子」の「保」という漢字に、 実はこの『霊衣』という意味があることを知ってびっくりして。嬉しくて。 この仕事との運命を感じました。今は『霊衣』に少しでも近づけるように、日々高揚しながら作品づくりをしています。」
これからもチャレンジングなことをしていきたいと語る吉田さん。 「どきどきを作りたいから、自分もどきどきして生きていかなくちゃ。」 吉田さんの言葉の中には本当にたくさんのどきどきが詰まっています。 今の時代を自分は生きているし、今生きている人に喜んでほしい。 作品も、自分も、着てくれる人も、一緒に現代を楽しんでいきたい。 その想いを形にしていく吉田さんの創作活動。今度はどんなおもしろい感性を見せてくれるのでしょう。 これからの作品がとても楽しみです。
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