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2018/3/11 銀座生まれの大島紬 第2作目の「織り上げ式」を行いました。

(左から:織り手・清田、野村様、久喜様)

2018年3月11日、「銀座生まれの大島紬」第2作目の織り上がりを祝う「織り上げ式」が行われました。今回織り上がったのは“吹雪”と題された泥染めの大島紬。ご縁をいただいた野村様は、結婚のお約束をされている久喜様と一緒にかけつけてくださいました。

彼が出発する前日の協同作業

翌日は、旦那様になる久喜様がお仕事の関係で一年ほど遠くへ行かれる出発の日、つまりこの日は二人で過ごすことのできる最後の日でした。

お二人はともに銀座もとじで初めて誂えた大島紬をお召しになって来店されました。久喜様は100亀甲の大島紬、野村様は源氏車が華やかに織りだされた白大島。まだ学生だった頃に「着物デート」の夢を叶えたいとお求めになられた思い出の詰まった一着です。装いに表れるお二人の想いに、集まったスタッフも皆胸が熱くなりました。

機の前には久喜様と野村様、織り手の清田。かけつけた店主とスタッフ達がひしめく店内で行われる祝福の儀式は、まるで少し早い結婚式のようでもありました。

「切ります!・・こわい、こわい・・」

「大丈夫ですよ!」

清田がサポートしながら、久喜様が張り広げた生地を、野村様が恐る恐る慎重にハサミを入れていきます。

野村様は着物を楽しむようになってから和裁の勉強も始められ、今回の大島紬は自ら仕立てる記念の着物にしたいとのこと。緊張はしていましたが、断ちばさみの先を見つめる眼差しはすでに「和裁士の目」そのものでした。

全長13メートルの反物が機からゆっくりと取り上げられて、店内は歓喜の拍手が鳴り止みませんでした。両手でしっかりと握手を交わす野村様と織り手・清田、そしてその様子を目を潤ませながら見守る久喜様。喜びとともに、きっと切ない思いが去来したことでしょう。

「遠くへ行く側の一年と、待つ側の一年は違うよね」

ついこぼれた野村様の言葉に、

「一年なんてどうってことない。どうせその後何十年も一緒にいるんだからさ」

久喜様が力強くもさらりと返します。野村様は頷きながら照れたような表情を浮かべていました。

ついにこの瞬間を迎えることができた――

嬉しそうなお二人を前にして、織り手の清田も溢れる涙を堪えることができませんでした。

清田には強く秘めた思いがありました。旅立ちの日までになんとしてでも織り上げ、久喜様の新しい門出を祝いたい。同じ空間で喜びを分かち合い、離れている間も二人を結び続ける素敵な思い出を作っていただきたい。

ただただその思いだけで、一本一本の糸を織り進めてきました。

「このお店が、二人にとって一番くつろげる場所なんです」

「二人で来られなくなる前に来よう、って話してたんです」

最後のデートの場所に銀座もとじを選んでくださったことへの感謝を伝えると、お二人はそう仰います。大島紬のこの小さな店が、一番くつろげる場所なのだそうです。これ以上の嬉しい言葉があるでしょうか。
“お客様にとってオアシスのような店になりたい”それこそが、店主泉二が38年間ずっと願い続けていることなのです。

数ヶ月前、機にかかる大島紬に目を留めてくださったのは野村様でした。深い茶泥地に粉雪が舞うように蚊絣が織り出された柄行は、帯を選ばず楽しめそうと一目で気に入ってくださいました。以来、大島紬店は二人の定番のデートコースの一つになりました。

「こんにちは」「いらっしゃいませ!」

明るい笑顔を交わすと、子供の成長を確認するように進み具合をご覧になり、そのあとは機を囲み、大島紬のことはもちろん、趣味や仕事、将来のこと、いろいろなお話をしました。
目の前で少しずつ長さを伸ばして出来上がっていく絣模様。笑い声の合間に、まるで相槌を打つように筬の音が響く、穏やかで平和な時間。「銀座生まれの大島紬」は、着物というよりも、織り上がるまでの幸せな時間を楽しんでいただくものなのかもしれません。

織り手の清田は、銀座もとじに入社する約一年前までは奄美大島で機織りをしていました。分業制の大島紬は、基本的には自分と機との一対一の世界。孤独な仕事であり、織り手は織り上がりまでをひとりで完結します。でもこの「銀座生まれの大島紬」を織っている間は、常にそのお客様のことを思いながら、お客様と一緒に同じゴールを目指しているような気持ちになり、この感覚は奄美では体験したことのないものだそうです。「顔の見えるものづくり」の究極形ともいえるこの「銀座生まれの大島紬」によって、作り手がお客様のそばで心を込めて仕事をすることの充実感と幸せを日々感じていると言います。

一本の糸から布になり、お客様の物語になる

店主・泉二が大島紬の再生と復興を目指して、銀座もとじ大島紬店をオープンしたのが2012年。昨年5周年を迎えたのを機に、ついには「路面店に大島紬の機を置く」という長年の夢を叶えることができました。

奄美大島で機織りをしていた織り手・清田を招き入れ、一本の糸から大島紬ができあがっていく工程をすべてご覧いただきたいとスタートした「銀座生まれの大島紬」ですが、逆にお客様から感動を分けていただいていると店主・泉二は言います。

「たった一本の糸が、経の絣と緯の絣が出会いながら一枚の布になり、お客様と出会って『物語』に変わる。一本の糸から完成するまでを見守っていただいた時間がすべて詰まったこの反物は、久喜様と野村様にとっては、きっと一生の思い出にしていただけると思う。そして10年後、20年後、30年後・・家族、子供や孫の物語もすべて宿して引き継いでいくことができる。私たちは着物を通じて、お客様の感動的な物語の1ページにいつも参加させていただいている。これこそ着物の文化、呉服屋冥利につきる」

大島紬は通常、一度に二反分の長さの経糸をかけて同じ柄を二反続けて織るので、次に織り上がる反物も泥染めの“吹雪”です。織り上げ式の後、野村様は裁ち落した残りの経糸に「双子の兄弟もがんばって」と声をかけられていました。(※すでにこちらは売約済みとなっております)

2018年の秋以降には、次の作品の経糸がかけられ、新しい物語がスタートする予定です。ぜひお楽しみにお待ちくださいませ。


※こちらに記載しておりますお客様のお名前とお写真については、ご本人様のご了承をいただいております。

銀座生まれの大島紬 織り手・清田寛子の紹介

「銀座生まれの大島紬」第1作目の「織り上げ式」について

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