もとじの活動

【トークレポート】2016/10/09 大高美由紀さんのぎゃらりートークを開催しました

大高美由紀さんのぎゃらりートーク

2016年10月8日(土)〜10(月・祝)まで、 銀座もとじにて『絣模様で創る空間‐大高美由紀の織』を開催しました。10月9日(日)には大高美由紀さんと工芸評論家・工芸史家の外舘和子さんをお迎えし、大高美由紀さんが織りなす絣模様の魅力や、大高さんが創作の道に入られたきっかけ、制作の際に大切にされていることなどについてお伺いしました。

▲10月催事『絣模様で創る空間‐大高美由紀の織』詳細はこちらから

▲大高美由紀さんの作品は<10月末まで>店頭とネットショップにてご覧いただけます

2010年に熱海のMOA美術館にて開催された日本工芸会東日本支部の50周年記念展で奨励賞を受賞された大高美由紀さん。その受賞作の帯に銀座もとじがひとめ惚れしてから6年の月日が流れました。作品に魅了され「この方を逃してはならない!」とはやる気持ちで日本工芸会の先生にご紹介いただき、「いつかは個展を」と願って大高さんの工房へ足を運びました。そして今回、ついに銀座もとじにて待望の初個展を開催する運びとなりました。

美大生から会社員に。そして染織の仕事との運命的な出会いへ

紫色の帯
九寸名古屋帯「春の霜」

子どもの頃から布で何かを創るのが好きだったという大高さん。ところがある年齢までは着物にはさほど関心がなかったそうです。そんな大高さんの運命を変えたのは多摩美術大学で油彩画を学んだ後に、会社員として働いていた20代の頃でした。ある百貨店の着物売り場で機織りの実演を初めて目にして、糸の線と線が繋がることで美しい模様の面ができるということを知り、こういう世界があるのだという感動が頭から離れなくなったとお話しくださいました。

「自分が着る着物を創ってみたい!」
そんな想いにかられた大高さんは、新潟県の十日町で1年間、紬織や経緯絣の基礎を学ぶスクールへ入所。その後、日本工芸会所属の絣織作家、神山尚子先生の内弟子として3年半の修行を続け、会社員から織りの世界へと華麗なる転身をされたのです。

規律の厳しい世界でも、機織りをするだけで満足できた

「美大を卒業され、会社員となった後にこの世界へ入られた大高さんはとても珍しい経歴の作家さんです。まさに戦後の世代であり、いまの20代30代の方で転職を志す方の希望の星でもあります」
と外舘さん。それだけに大高さんは、強い意志を持ってこの道に入られたということなのでしょう。

「最初の1年は先に弟子入りされていた先輩と一緒に仕事をこなしていました。毎日朝6時から掃除をし、自分の好きなように動けない共同生活に馴染めずに辞めてしまう人も多かったですね。目の前にある先生の仕事をまずこなさなければなりませんから、自分のやりたいことは後回し。それでも私は、毎日機織りの仕事ができるだけで満足でした」

自分の工房を持って20年、その間に8回の受賞

大高美由紀さん

「弟子から卒業して一人でやるようになり、一番不安だったのは『大丈夫だよ』と言ってくれる人がもう傍にいなくなってしまう……、ということでした」と大高さん。「それでも続けていくうちに、様々なご縁をいただくことができ、やるしかないなという気持ちになりました」

「日本工芸会には優秀な作家さんがたくさんいます。その中でも大高さんは常に注目され話題になる作家のひとりです。わずか20年の間に8度も賞を受賞することは本当にすごいことなんですよ」
工芸評論家である外舘さんもそのようにお話しくださいました。

大高さんの魅力は絶妙なグラデーションと色彩感覚

水色のおきもの
紬絵羽「花筏」第62回日本伝統工芸展入選作

外舘さんは、日本工芸会での受賞の難しさについてこう続けます。
「日本工芸会の東日本支部には7つの部門があるので、賞に選ばれる作品は染織部門以外の審査員にも選ばれなければなりません。専門分野の異なる者の目から見ても優れていると思われなければ賞はなかなか取れないということです。わずか20年の間に8度の賞を得ている大高さんの作品は、その良さに主張があり、見る方に伝わる作品なのです」
多くの場合、染織の世界では技術そのものを身につけなければ模様にならず、良い作品が創れるようになるまで、つまり受賞にふさわしい域に到達するまでにかなり時間がかかるのが一般的とのこと。
「大高さんは色彩感覚に大変恵まれています。色の組み合わせが上手く、縞が経糸と緯糸の関係を考えてできています。絣模様や色のグラデーションも絶妙ですね。織と染めの両方で色を描くセンスに優れているんです」と、外舘さんは賛辞を惜しみません。

着物をつくることからは離れない、それがこだわり

「花香る」
紬絵羽「花香る」第45回日本伝統工芸染織展入選作

大高さんが大切にされていること、ここだけは譲れないということは何ですか?とお伺いすると「着物を織ることから離れないことです。ですからショールなどの作品にはしません。着物を織るからこそ、12メートルの長い布を織ることも苦にならないんです」という答えが返ってきました。外舘さんは「着物は長い12メートルの布を織ることで、全体の空間が表現できるもの。大高さんはその面白さをわかっていらっしゃる」とおっしゃいます。
「例えば、色の名前を言葉で“茶系”と言っても、実物を見るとそれだけではなく、深さや空間、奥行きがあるものです。大高さんは美大生時代にデッサンをたくさんやられており、そこで自然に3次元を2次元に変換する訓練をされていたのでしょう」
その言葉に大高さんも「その訓練のおかげで平面を見ても空間を感じてしまうんです」と納得されていました。

特別に織り上げて頂いた作品が銀座にもとじに

経と緯の線が基本の絣模様に、さらに「斜め」のリズムを生み出すよう色を緻密に配して新たに生まれる空間性あふれる作品たち。

第45回日本伝統工芸染織展で入選した作品『花香る』を拝見すると、大高さんの着物は ある時期を境に渋い色から少しずつピンク系の明るい華やかな色味も使われるようになったことがわかります。

ご自身でおきものをお召しになられる大高さんは、つねに「着姿」を想像してデザインされているそうです。素晴らしい作品の数々も、お客様が「お召しになったとき」にその美しさは完成されるとのこと。例えば、帯は裏側になる「返し」の所にまで柄があり、締めているご本人には見えなくても、その方がお召しになられた際にどの方向から見られても美しい、ということが大切だとおっしゃいます。

今回は工芸展に出品される大変お忙しい時期に、銀座もとじへの作品も特別に織り上げていただきました。会期直前まで機を動かしてくださり、最後にはプラチナボーイを使った九寸帯を手持ちで納品くださいました。大高さんの渾身の作品群を一堂にご紹介できる素晴らしい三日間、そして、その創作の並々ならぬ熱意に触れる夢のような一時間でした。

集合写真
写真左から:店主 泉二弘明、大高美由紀さん、外舘和子さん

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