第33回:草木染織作家 山岸幸一さん

草木染織作家 山岸幸一さん 一口対談

『「志を織る 山岸幸一の紬織」展』
期 間 : 2017年2月24日(金)~26日(日)
場 所 : 銀座もとじ 和織、男のきもの


信念を貫いて40周年

泉二:作家活動40周年おめでとうございます。こうやって私どもで記念展を開けることを大変嬉しく思います。

山岸:ここまで来られたのも泉二社長のお力添えがあったからです。こちらこそありがとうございます。

出会いは遠い昔に

座繰りで糸を紡ぐ
座繰りで糸を紡ぐ

泉二:出会ってから本当に長い歳月が流れましたね。

山岸:本当に。最初の印象はお互いにあまり良くなかったですよね。

泉二:(笑)

山岸:私も当時は「銀座の呉服店の社長」と聞いて「一過性の気まぐれで私の作品を扱うのだろう。興味本位で扱うのでは」って疑念を持っていましたから。最初は歓迎できませんでした。

泉二:それは私も肌で感じました。だからこそ「時間を掛けて大切に扱いたい」って思っていました。最初はビデオをみて帰りましたが、「次回また訪問するぞ!」って俄然、闘志が湧いて、私も粘りましたねえ(笑)。

山岸:泉二社長が何度も足を運んでくださった熱意と信念に、私もだんだん心を開いていきました。そして自分の信念だった、ひとつのことをお願いしたんですよね。

泉二:はい。山岸先生の男気を見せていただきました。

朝日が昇る前に染色に取り掛かる
朝日が昇る前に染色に取り掛かる

山岸:私は自分の信念を貫いて仕事を続けていましたが、なかなか陽の目を見ることは無かった。でもその中で親身になって助けてくれ、私の作品を信じて支えてくれた取引先(問屋)があった。『食うや食わずの私を支えてくれた社長(既に先代になりましたが)の為にも何があってもそこを裏切ることは出来ない。泉二さんに展示会をお願いするにも、直接取引は出来ない、その問屋を経由してお願いしたい。』と。

泉二:そうですね。それに関しても山岸先生の誠実さを感じました。なので、当時の私では、なかなか取引をお願いする事が難しい問屋さんでしたが、なんとか取引できる道をそれこそ日参して作りました。

山岸:暫くして泉二社長がニコニコしながら「取引の道を作りました。」と言って来て下さった時は、「泉二社長は本当に信頼に値する人だな」って思いました。

作品展への取り組みに感動!お互いに信じあう

山岸:そこから最初の作品展へのスケジュール組みが始まったのですが、その工程にも私はビックリしました。泉二社長が、「まず取材をさせてください。作る工程を1年掛けて実際に目で見て耳で聞いて触れて学ばせてください。理解した上でしっかりした案内状を作ります。販売するリーダー格のスタッフにも学ばせてください」と言ってきた時には本当にビックリしました。

泉二:あれだけお願いしたことですから、私も「なにがあっても失敗は許されない」と身震いするくらいの思いがありました。「展示会を開催しました。無事に終わりました。ごめんなさい。販売できませんでした。」と言う結果は絶対に出せないと。大げさじゃなく「社運をかけて」の意気込みで臨みましたから。

早朝、真冬の小川で染色した糸を洗う
早朝、真冬の小川で染色した糸を洗う

山岸:私もビックリしました。まず2月の寒い中、泉二社長を筆頭にスタッフさんが数名で寒染めをする前の晩にいらして。「迷惑掛けるから」と一度ホテルに戻られて仮眠を取って、朝3時に雪の中タクシーで再び工房にやって来た。皆さん本当に息を詰めて私の寒染工程を、目を凝らしてみている。暖房は一切ない作業場で、私の水を繰る音とスタッフさんのメモを取る音、そして作業に邪魔にならないように気にしながら撮影しているカメラの音。その中で数時間を過ごして。でも誰もしゃべらない。本当に真剣で。

泉二:そうでしたね。みんな白い息を吐いて、一心に目を輝かせて見ていました。 私は思うんですよ。実際に目にして学ばないと作品や作家さんへの共感は生まれないって。 スタッフ一人ひとりが本当に感動した時に生まれた出た言葉は、魂が入っていてちゃんとお客様に届く。そう思っているのであの時も数名で伺いました。そして朝8時頃に工房裏手の小川で、山岸先生が糸を洗っている手元から浮かび出てきたあの光るような神々しい紅の糸。それが見えた瞬間にスタッフ一同から歓声が上がりましたよね。

山岸:本当にそうでした。こちらも全身全霊で仕事にあたっていたので、途中から泉二さんのスタッフがいることを忘れていたんですね。で夢中で染めて、小川で洗って。声がした時に、初めて皆さんが居た事に気が付いて。見回したら雪の中からみんなが小川を覗き込んでいる。「あ!こんなに来てくれていたんだ」って改めて気が付きました。 一緒に同じ時間を過ごしたことで感動がありましたね。

泉二:スタッフたちが感動で涙を流しながら本当に活き活きとした顔をしていたので「これなら行ける!」って思いました。そして夏の紅花摘みから紅餅作りも見せていただいて。

氷点下の中、糸を乾かす
氷点下の中、糸を乾かす

山岸:私もひとつの作品を作るのに「4年から5年」を有に掛けますが、泉二社長さんも丸1年掛けて取材して、それから丁寧な案内状を作って。結果、丸々2年位、準備期間を掛けてくださいましたよね。

泉二:そうでしたね。

山岸:「展示会が始まる前に、事前勉強をしたいから」との依頼で、泉二社長の銀座のお店に伺った時、スタッフさんの意気込みにまず圧倒されましたし、心から私の作品を好きになってくれていて、ひとことひとことに「心」を感じました。 なので、私の中では「展示会が成功するとか、しないとかはもう良いや。これだけ大切に思ってくださる人がいるというだけで嬉しい」と思ったくらいです。

泉二:最初に取材したメンバー達が中心となって、写真を見せながら留守番スタッフに説明する勉強会を何回も開いたのですが、説明するスタッフ達がそれこそ涙しながらに熱く語るんですよ。僕も「本物はこれだけ人の心を動かすんだ」と思ったら嬉しかったですね。

あれから22年、志から今は感謝の涙

泉二:あの出会いから22年の歳月が流れましたね。山岸先生が1人でなさっていたお仕事に息子さんや娘さんが加わって、今ではご一家で携わっていらっしゃる。笑顔一杯の工房の様子を見ると涙が出ます。

山岸:そうですね。家族には苦労を掛けました。息子は「食の道に進む」と言って一度は家を出ました。娘は無邪気に「お父さんの仕事好き!やりたい」とは言ってくれていました。娘は「感性もいい物を持っているので物づくりには合っている」とは思いましたが、私が目指しているこの染織り仕事は生半可ではないですし、過酷で体力勝負も大きい。女性一人で出来る仕事ではないので心配でした。それが泉二さんとの出会いで色々と広がりが出て、今では一家揃って物づくりに携わっています。笑顔が一杯の今は本当に嬉しいですね。

氷点下の中、糸を乾かす
左)山岸幸一先生、右)店主・泉二

泉二:僕も見るたびに感動します。

山岸:泉二社長が私の作品を扱ってくださる度に初心を忘れず必ずスタッフさんを勉強に連れてくる。既に何度も扱っているから当然のことながら「製作過程は見なくても分かる」と言う状態なのに、必ずスタッフさんを連れて来てくれる。その泉二さんの「初心を忘れない姿」「慢心しない姿」があって今の反映した銀座のお店があるんだなって思いますね。

泉二:いやいや。人間は忘れる生き物なので、常に新たな刺激を受けて、ひとつひとつに感動して、しっかり臨んでほしいと思うんですね。でなければ「真剣にものづくりをしている作家さん」に申し訳ないですから。

山岸:泉二社長の「この変わらない姿勢と志」には本当に頭が下がります。 泉二:それは私も一緒ですよ。山岸先生の物づくりは絶対にぶれないですから。「信念の人」ですよね。だからこそ、大切に、大切にこれからも扱わせていただきたいと思っています。

40周年記念、次世代へ繫ぐ

泉二:先生の作家生活30周年パーティの折は山形で開催されてて、私は所要があって伺えなかったのですが、今回の40周年は、私は全力でお祝いしたいと思っています。

山岸:ありがたいです。私の物づくりは時間を掛けて行うので本当に数年に一度になりましたが、毎回、泉二社長がスタッフさん達と工房に勉強に来ては、「今度は先生の工房のドアぐらい作れるように頑張ろう!」とか「あそこを修繕できるくらいに頑張ろう!」って(笑)、意気込みを言葉にして見せてくれて、毎回成功に導いてくださる。嬉しかったですね。 お蔭で息子も娘も「お父さんの跡を継ぎたい」とこの道で生きることを選んでくれました。

氷点下の中、糸を乾かす
山岸幸一先生と二代目・大典さん

泉二:ありがとうございます。でも、「成功は先生の作品の持つ素晴らしさ」がもたらすものですよ。私達の力なんて微々たるものです。ただ、跡継ぎが出来たことは嬉しいですね。

山岸:泉二社長も息子さんが2代目として活躍しだして。啓太さんも立派になられましたね。ちょうど家の息子達と同年代なので今度は親子2代に亘って末永くお付き合いできたら嬉しいです。

泉二:そうですね。本当にそう願います。 今回の山岸先生の40周年記念に当たって私が考えている事があるんです。まだ考え途中で、夢物語になってしまうかもしれませんが。

山岸:なんですか?

泉二:今まで、先生の作品にご縁を頂いたお客様を集めてささやかなパーティをしたいんです。ドレスコードは「山岸先生の作品」かな。先生の作品を身につけて参加していただくパーティです。これが出来たら私は涙が出ますね。

山岸:ほ、本当ですか?!それが実現したら私の方こそ涙ですよ。子供達にぜひとも見せたいですね。本当に「夢」ですが。

泉二:「夢は願えば叶う」といいますから。「念じ続ければなんとか形になる」それが僕の信念でもありますし。私にも跡継ぎの啓太がいますから、これからなんとしてでも実現するように頑張りますよ。(笑)

山岸:泉二社長といると本当に「夢」が尽きないですね。これからも頑張ります。

泉二:はい。お互いに身体に気をつけてこれから先も頑張りましょう。 まずは今回の展示会を成功させなければ。全力で頑張りますね。 今日はありがとうございました。

[対談日:2017年2月吉日 筆:荒井博子]

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